就活ルール、なぜ廃止論?

2018/10/06 14:30

記者会見する経団連の中西宏明会長=9月25日、東京都千代田区

 経団連の中西宏明会長が会員企業向けの就職・採用活動のルールを2021年春以降入社の対象者(現在の大学2年生)から廃止したいとの意向を表明しました。なぜ今、廃止論が出てきたのでしょう。 関連ニュース 就職氷河期世代にあたるアメリカのジェネレーションX、最も収入が高い年齢層だった 中小企業と大学の就職担当者つなぐ情報交換会 10月8日、神戸で開催 第1志望に就職したのに…「女の新卒なんてなめてんの?」名刺ビリビリ、モンスター顧客のセクハラに心身ボロボロ 地獄営業所で心折れた社会人1年目【漫画】

 -就活ルールって何?
 「経団連が大卒・大学院修了予定者に対する会社説明会の実施や面接開始、内定を通知できる時期を明示したものだよ。経団連が『採用選考に関する指針』として公表し、約1600の会員企業・団体に順守を求めている。早くから人材を確保する『青田買い』を防ぎ、学生が就職活動に追われて学業に専念できなくなる事態を回避するのが目的だ。ただ、紳士協定なので企業が協定を破ったとしても罰則はないんだ」
 -いつからルールがあるの。
 「65年前の1953年に企業と大学が採用時期を定めた『就職協定』がルール化の始まりだ。現在の指針は2013年に発表され、今のスケジュールは15年に決められた。説明会を大学3年生の3月、面接を4年生の6月、内定は10月にそれぞれ解禁日を設定している。20年春入社組までこれが適用される予定だよ」
 -ルールは守られているのかな。
 「経団連に加盟していない中小企業や外資系企業にルールは適用されないし、経団連会員企業も全てが守っているわけではないのが実態だ。ルール破りをした企業ほど優秀な人材を早期に獲得できる機会を得られるから、形骸化しているとの批判が絶えることはなかったんだ」
 -なぜ中西会長は廃止論を言い出したの。
 「ITや人工知能(AI)など技術革新が急速に進む中、企業は世界中で人材獲得競争を行っている。海外経験も豊富な中西会長は、終身雇用を前提に新卒者を一括採用するという日本特有の雇用形態が時代にそぐわなくなってきたと考えているようだね。既に通年採用を行っているIT企業なども多く、横並びのルールには限界も指摘されてきた」
 -ルールは廃止に向かうの?
 「経団連の中でも『寝耳に水』と驚く人もいる。日本商工会議所の三村明夫会頭は『何らかのルールは必要』『就活の時期が際限なく早まってしまう』とも述べている。大学側は、学業がおろそかになることを心配しているし、いろんな議論を積み重ね、15年に決まった日程もようやく定着した感がある。議論がどうなるのか、見えないね」
 -当事者の大学生はどう思っているんだろう。
 「賛否両論のようだ。同じスタートを切るためルールが必要という声の一方、ルールが形骸化しつつあるから、実態に合わせてなくした方が公平という反応もある」
 -今後どうなるんだろう。
 「現在の指針は今の大学3年生が対象の20年春入社までを定めている。21年春入社以降の指針は、9日の会長・副会長会議で審議し、廃止となる可能性がある。政府は今後、新設する会議で、指針に代わるルールについて検討するとしている」
 -新たな会議ではどのような議論をするの?
 「政府と大学側、経済界が新たなルールづくりについて話し合う。21年春入社については時間がないため、現行日程を維持する案が有力となっているね」

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