四季折々、五感フルに“通”な楽しみ方アリ 市立森林植物園

2019/09/08 07:53

園内に生える樹木「ラクウショウ」の気根。帽子をかぶせてみた=神戸市北区山田町上谷上

 三宮からバスで約40分。自然に癒やされたい神戸っ子が気軽に訪れられるのが、神戸市立森林植物園(同市北区山田町上谷上長尾)だ。総面積約143ヘクタールの広大な敷地内には、テーマごとにさまざまな植物が生い茂る。だが意外にも、名物アジサイの見ごろ以外は来園客は少なめだという。もったいない! そこで五感を働かせた“通”な楽しみ方を探してみた。(伊田雄馬) 関連ニュース 雨露に輝くシャクナゲ 神戸・森林植物園 神戸で17人感染、2人死亡 新型コロナ 【速報】兵庫で新たに46人感染 9日連続で100人下回る

 ■見る
 春夏秋冬、切れ目なく四季の花が咲く同園。中でも6~7月に見ごろを迎える神戸市花・アジサイは約5万株が栽培され、園内各地で異なる品種が見られる。写真共有アプリ「インスタグラム」で「♯(ハッシュタグ)森林植物園」と検索すると、アジサイの写真が半数近くを占める。
 だが、足元にも面白いものがある。代表格がヒノキ科の樹木「ラクウショウ」だ。園内の「長谷池」近くではラクウショウの木の近くに、高さ30~60センチの円すい状の物体が何本も顔を出している。これタケノコ? 不思議がっていると、井上隆司園長が「空気を取り入れる『気根』です」と説明してくれた。
 ラクウショウはアメリカ南部やメキシコが原産。高さは30~50メートルにもなる大樹で、原産地では雨期に根元が水没するため、気根を水面上に出して息をするという。そのため、湿地でも生きることができる。
 最初はでこぼこな形が不気味だったが、見慣れると親に寄り添う子どものようにも見える。「帽子をかぶせたら“インスタ映え”するのでは」とひらめいた。後日、家族の帽子を持って行き、かぶせてみた。あんまりかわいくなかった。
 ■嗅ぐ
 散策中、ふと甘い香りが鼻をくすぐった。井上園長が「この木を見てください」と上を指さす。「カツラの葉からは甘い匂いがするんです」。
 カツラには「マルトール」と呼ばれる芳香成分が含まれ、キャラメルに似た甘い香りを放つという。マルトールは砂糖を含む菓子の製造過程で生成され、甘みや風味を強める添加物としても利用されるとか。
 もっといろいろな香りを楽しみたいなら、ぜひ園内の東端にある「香りの道」へ。キンモクセイをはじめ、甘い匂いの花を咲かせるオガタマノキやイイギリなどが植えられている。
 ■味わう
 歩き回って汗をかいたらぜひ、正門入り口近くのカフェ「ル・ピック」へ。何を隠そうここは、あの弓削牧場(北区山田町下谷上)の直営店なのだ。
 一押しは来園者の4人に1人が食べるという「ミルクソフトクリーム」(350円)。一口食べるとミルクの濃厚さに驚く。控えめな甘さや口溶けの優しさも際立つ。「植物園のオリジナル商品を」と同カフェのために開発された逸品だ。
 ランチや軽食に人気なのは「ひよこ豆のスパイシーカレー」(800円)。味に深みを出すため、牧場自慢の完熟カマンベールチーズを使い、ヨーグルトでまろやかな辛さに仕上げた。コテージ風の店内で、鳥のさえずりを聞きながらいただきたい。
     ◇
 同園では定期開催の森林浴ヨガをはじめ、「鳴く虫を聞く夕べ」(15日)や園内でのジャズライブ(10月19・20日)など、秋に向けてさまざまなイベントが開かれる。改めて強調しよう。「アジサイの時期だけではもったいない」

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