温泉×eスポーツ、アニメでファン引き寄せ 有馬の取り組み
2019/09/24 05:30
関西初のeスポーツ観戦バー「バル・デ・ゴザール」の店内=北区有馬町
「伝統」「格式」だけでは、街のにぎわいや躍動感はつくれない。日本三古泉の一つ、有馬温泉(神戸市北区)も例外ではない。伝統を守るために、変化し、先を見据える。有馬に芽生えつつある次なる手は「温泉×ゲーム」「温泉×アニメ」だ。(西竹唯太朗)
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夜のとばりが降りるころ、木目調で落ち着いた店内に客たちの歓声が響く。関西初のeスポーツ観戦バー「BAR DE GOZAR(バル・デ・ゴザール)」。2018年5月にオープンした。スクリーンには格闘技やサッカーなど、プロ選手らの対戦映像が流れ、観客は料理や酒を楽しみながら観戦する。
仕掛け人は「陶泉御所坊」の専務金井庸泰さん(36)。「長時間座ったままの観客の疲労を有馬の湯が癒やします」と温泉とeスポーツの親和性を強調する。
「ただ、狙いはもう一つあって…。若い働き手の確保です」
若者が旅館で働き始めても、休みの日や仕事終わりに足を運ぶ娯楽施設がなく、すぐに辞めてしまうことが多いという。「スマホや携帯ゲームへの依存性が高い若者らを引きつけるには格好のコンテンツ。機材さえそろえば低コストで成り立つ」と話す。
プロのゲーマーや旅館の職員らで「トレスコルヴォス有馬」と名付けたeスポーツのチームも結成。バル・デ・ゴザールを会場にサッカーゲームの大会も開いた。19年8月には、岩内温泉(北海道)で開催。20年には草津温泉(群馬県)での大会を予定する。
「海外市場に比べ、日本はまだまだ遅れている」と金井さん。「全国の温泉地が連携し、『温泉=eスポーツ』の定着を図れば、国内外の多くのゲーマーやファンを引き寄せられるはず」と期待をのぞかせる。
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海外から注目を集めるクールジャパンの一つ、アニメ。有馬では金泉をイメージした「輪花」と、銀泉の「楓花」の“萌えキャラ”姉妹がPRに一役買う。
全国の温泉を舞台にしたアニメプロジェクト「温泉むすめ」で、東京の製作会社・エンバウンドが17年に、地域活性化につなげようとスタートさせた。
各地の温泉に宿る神さま「温泉むすめ」たちが、東京の学校に通いながら「人々を沸かせ、癒やすこと」を目標にアイドル活動に励むという設定だ。これまで誕生したキャラは100人(体)を超える。
プロジェクトの火付け役で有馬温泉の煎餅店「三ツ森」の常務弓削次郎さんは「土産物店や旅館にグッズやパネルを置いているほか、トークイベントなども実施。継続的にファンが訪れるようになった」と手応えを見せる。
また、輪花・楓花は、草津(群馬県)や箱根(神奈川県)、登別(北海道)など有名どころの温泉むすめと一緒に9人グループ「SPRiNGS(スプリングス)」を組んでいる。
さらに、有馬の声掛けで、台湾・新竹県の景勝地「内湾」に海外勢としては初のキャラ「尖石内湾」が誕生した。現地で開かれたお披露目会に輪花・楓花も参加した。
湯のまちで始動する「eスポーツ」と「アニメ」。伝統にとけ込み、新たな有馬文化として成長していけるのか。今後の取り組みに注目が集まる。