【10】「今度は支える立場に」大学へ進む高3生の目標
2018/02/28 10:00
自室の扉に詩。励ましの言葉
瑛太の部屋の扉には、英語の詩が貼ってある。詩人・高村光太郎の代表作の英訳で、職員が手書きして贈ったエールだ。
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〈僕の前に道はない/僕の後ろに道は出来る〉
高校3年。大学進学を目指して1年の時に部活をあきらめ、学費を稼ぐためにアルバイトに励んだ。最初はすし店。「常連さんなど幅広い年代の人と出会い、いろんな考えに触れられた」。学びは多かった。
一方、仕事を終えて帰宅すると午前0時を過ぎることも。通学には1時間20分かかるため、午前6時50分に尼学を出る生活。すし店は半年で辞め、その後はプール監視員や飲食店員として働いた。
その中で勉強時間を確保してきた。
職員も応援した。瑛太が勉強の息抜きにバドミントンをしようとすると、横に忍び寄ってつぶやいた。「本当にそれでいいんかなー」
瑛太が笑う。「1回打った瞬間に横にいて、ちょっとくらい息抜きさせてよって。いつもプレッシャーの目があり、勉強するようあおってくれた」
道は拓(ひら)けた。昨秋、学費を一部免除してくれる山口県の大学に合格。神戸の財団から返済不要の奨学金を受けることも決まり、新生活に期待を膨らませる。
将来について尋ねると、真っすぐな目で語った。「経験した自分だからこそ、力になれることがある。児童養護施設で働きたい」。いったんは施設に勤めてから、数学の教師を目指すという。
尼学に来てから、精神的にまいった時期がある。外に出られなくなり、バイトに行けなかった。高校へは職員に送迎してもらい、何とか通った。「しんどい時に寄り添ってくれた。今度は支える立場になりたい」(文中仮名)