「チームのためならウオーターボーイだってする」ラグビー世界的名手ダン・カーター、神戸を去る

2020/05/23 20:09

正確なパスや広い視野でチームをけん引した神戸製鋼のSOダン・カーター

「世界一の司令塔」が神戸を去った。ラグビー・トップリーグ(TL)神戸製鋼からの退団が決まった「DC」こと元ニュージーランド代表SOダン・カーター(38)。サッカー界ならリオネル・メッシ、バスケットボール界ならコービー・ブライアントらと並び称される世界的名手は、名門復活に欠かせない存在だった。


 数字が全てを物語っている。36歳で加入した昨季、出場したTL7試合は6勝1分け。唯一引き分けたリーグ第4節のトヨタ自動車戦は4PGを決めて窮地を救い、サントリーとの日本選手権決勝は正確無比なタクトで55-5の圧勝劇に導いた。
 新型コロナウイルスの感染拡大でシーズンが打ち切られた今季も、リーグ中断までに6試合中5試合に出場して全勝。得点ランキングトップの68得点をたたき出していた。カップ戦を含め、在籍した2シーズンで自身が出場した公式戦は一度も負けていない。
 DCの価値はプレーだけではなかった。SH日和佐篤は「ただのラグビー好きのオッサンですよ」と親しみを込めて話していたが、全体練習後も若手に声を掛けて練習に付き合わせ、アドバイスを惜しまなかった。最後は通訳をキャッチ役にキック練習をひたすら繰り返す。どんなに寒い時期でも、メディア対応は常に紳士で温かだった。
 「チームのためなら、ウオーターボーイ(給水係)だってする」。そんな謙虚なスーパースターに率いられ、神鋼は18季ぶりの日本一奪還を果たした。コロナ禍で2連覇は幻となってしまったが、カーターは「とても良いチームへと進化しており、この先も明るい未来が待っている」と期待する。残る選手たちがレガシー(遺産)を受け継ぎ、新たな黄金時代を築いていく。(山本哲志)

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