バスケットボール・森ムチャ「負ける気はしなかった」

2020/06/19 16:18

兵庫国体バスケットボール少年女子2回戦・兵庫-福岡 延長、ブロックショットを決める福岡の森ムチャ(4)=2006年10月2日、神戸市須磨区のグリーンアリーナ神戸

 コートに降りそそぐのは歓声か悲鳴か。

 兵庫63-65福岡。
 試合終了まで10秒。
 ボールは、兵庫のエース山中美佳(神戸龍谷高)がキャッチした。
 自身の試合を終え、観客席にいた石川の池田智美(津幡高)は、兵庫の勢いを肌で感じていた。
 「一つのプレーに会場全体が望みを託しているような。選手はその期待に応えるような…」
 右45度。山中は「行くしかない」と決意した。
 スクリーンを振りほどいて向かってきた福岡の反町真理子(中村学園女高)に対し、右にフェイク。左へとドリブルを始めた。
 最終関門は福岡の森ムチャ(中村学園女高)。その右腕を振り払った。
 兵庫メンバーの思いがつまったシュートを、リングは受け入れた。
 65-65
 沸き立つ兵庫ベンチ。
 ブザー。延長突入が決まった。
 最終第4クオーターは福岡14得点。
 対する兵庫はほぼ倍の27得点。うち16点は山中が稼いだ。
 開催県の「使命」を自覚していた背番号5の情熱に、監督吉川公明はこみ上げるものがあった。
 「命懸けでやってくれた」
 一方、追いつめられた福岡ベンチ。コーチの大上晴司は焦った。
 「楽に勝てる力の差があるはずだった。『チームの兵庫』対『個の福岡』になってしまっている」

 5分の延長に入っても兵庫は攻め続けた。
 荒木恵美(夙川高)のゴール下シュートや、山中のバスケットカウントとワンスロー成功で、5点のリードを奪った。
 兵庫コーチの高松一人は「勝った」と思った。
 だが、福岡の森は「負ける気はしなかった」。
 残り1分半。逆転へ、福岡が奥の手を出した。
=敬称略。肩書、所属は当時=
(藤村有希子)

▼あらすじ 2006年秋の兵庫国体バスケットボール少年女子。選抜メンバーを組んだ地元兵庫は、最大のヤマ場と捉えていた強豪・福岡との2回戦に挑んだ。

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