ゆらり、ゆらり。闇の中から光が近づいてくる。まるでダンスをしているような曲線を描き、葉が生い茂る畝の間に光跡が浮かぶ。光の主は、イチジク農家の人の頭に着けられたライト。真っ暗な果樹園で、熟れた実を探しているのだ。神戸市西区は兵庫県内最大のイチジク産地。神出地区では、未明に収穫を行う。柔らかくデリケートな完熟果実を、新鮮なまま朝一番の店頭に届けるためだ。高さ2メートルほどの木々の間を、ヘッドライトをつけて台車を押しながら、食べごろの果実を探す。光を浴びたイチジクが赤く輝いた。
朝録
(25)エドヒガンの森 川西市
朝日を受け、薄紅の花が青空に映える。桜の野生種エドヒガン260本の大群落が、兵庫県川西市水明台1の猪名川沿い約7㌶に広がる。ここは数年前まで、常緑樹やササに覆われた暗い森だった。光を求めるエドヒガンは背を伸ばし、顔を出せた所で辛うじて花を咲かせていた。この窮地を救ったのが、地元住民でつくる「渓(たに)のサクラを守る会」だった。2008年から間伐に励み、遊歩道を整備した。