灘高架下、町工場から「アート村」に変貌 神戸
2018/08/08 16:59
春と秋の年2回開かれる「高架下ナイト」。卓球を楽しむイベントが開かれた=2017年10月24日、灘区城内通4(撮影・山崎 竜)
にぎわう水道筋のすぐ近く、阪急王子公園南西の高架下(神戸市灘区城内通4、5)が最近元気だ。昔は町工場が並んでいたというが、ここ数年は家具や革製品の工房、アートギャラリーなど若手クリエーターの拠点が続々と入居。兵庫県立美術館のお膝元らしく、「アート村」の様相を呈している。(上杉順子)
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管理運営する阪急阪神ビルマネジメント(大阪市)によると、正式名称は「灘高架下」。阪急王子公園-三宮駅間に約400区画ある。1936(昭和11)年の同区間高架化とほぼ時を同じくして、高架下の歴史も始まったとみられる。
以来82年、戦火を逃れ、阪神・淡路大震災にも耐え、戦前の意匠がそのまま残る。最大の特徴は「阪急さんらしい」とも評される、柱上部の優美なアーチ。この曲線を窓枠などに生かしたいと入居を決めたクリエーターも多い。同社の担当者は「阪急独自のデザインとは聞いていない」とするが、「自分たちに思いも付かないような発想で使っていただいている」と喜ぶ。
最近の活況には立役者がいる。見晴らしは良いが不便な坂の上の集合住宅や、古い外国人向けマンションなど、一風変わった物件の紹介で知られる「神戸R不動産」(中央区)。4年前から「文化施設に囲まれ落ち着いた立地なのに、空いていて伸びしろがある」(同社営業の西村周治さん)と着目し、クリエーターに積極的に紹介してきた。
2015年1月に入居した革工房「カルティベイトインダストリー」の岩永大介代表(41)は「海外とも取引しているので、スケール感のある場所を求めていた。ミシンを置く場所やデザイン画を描く場所など、自由にレイアウトできて良かった」と満足げ。東京に本店を置く傘店「コシラエル」は昨年末、神戸店を三宮や元町ではなく高架下にオープン。経営者が街の雰囲気を気に入ったという。
界隈では春と秋の年2回、普段は立ち入れないアトリエやスタジオを見学したり、飲食や卓球を楽しんだりするイベント「高架下ナイト」も開かれる。
今夜もガタン、ゴトンと頭上で音がする“村”のアーチ窓には、遅くまで灯がともる。