シニア世代の婚活どうしたら 「やり直したい人が多い」専門家に聞く

2019/10/15 17:52

長岡正光さん

 シニアにはシニア相応の婚活がある。幸せな出会いをつかむためにはどうしたらいいのか。45歳以上の男女を対象とした出会いサポートサービス「スーペリア」を運営する業界大手「オーネット」の広報グループマネジャー、長岡正光さん(53)に聞いた。 関連ニュース 兵庫の官製婚活事業曲がり角 価値観多様化、コロナ追い打ち 成婚数の目標届かず お寺で謎解きやバーベキュー 丹波市で婚活イベント 10月17、30日 結婚もせずひとりぼっち!?想像していた30歳と現実の30歳が全然違ったという告白が話題に


 Q 実際、シニアの婚活は盛況なのですか。
 A 相手を探すシニア世代は年々増加しているといって間違いありません。当社も2013年にスーペリアを開始しましたが、2015年の会員数を基本の100%として計算すると、17年には3倍以上にまで拡大しています。
 背景には、まず晩婚化があります。国立社会保障・人口問題研究所の人口統計調査によれば、50歳以上の男性の初婚は2017年で5377件。00年の3439件の1・56倍です。50歳時点の未婚率(15年)も男性が23・37%、女性が14・06%で年々増加傾向にあります。
 一方、50歳時点の離別率(同年)は男性6・26%、女性10・18%で、00年と比較するとそれぞれ1・33倍、1・41倍となっています。世の中の意識としても、熟年離婚に対するハードルが下がっているといえます。会員データを見ると、男女ともに70%以上が「結婚経験あり」。もう一度、結婚をやり直したいという人が多いのでしょう。
 パートナーが欲しいと考えているシニアの潜在層はまだまだ多いですね。当社の調査によると、パートナーを求めるシニアの中で実際に活動しているのは女性は24%、男性は9%しかいません。男性は「いい歳をして」「面倒くさい」「方法が分からない」などの理由で行動に移せていない人が多い。でもインターネットの普及や意識の変化でシニアの恋愛が一般的かつ手軽になり、これからもっと増えていくでしょう。

 Q シニア婚活サービスの会員はどのような人が多いですか。
 A この業界では、シニア会員は女性が多いのが現状です。スーペリアの会員も男性が45・1%で平均61歳、女性が54・9%で平均56歳。いずれも何らかの職業に就いている人が多く、半数以上が会社員です。

 Q シニア婚活の特徴とは。
 A 長い人生を背負っているシニアにとって、入籍前にクリアすべき三つの課題があります。それは相続、子どもの賛同、親の介護。相思相愛イコール結婚とはならない。「婚活」といっても、まずはパートナー探しのつもりで始めた方がいいでしょう。
 子どもの理解が得られなければ、相続トラブルのもとになります。皆が納得できるよう、あらかじめ遺言書を用意しておくのも一つの手です。何より結婚前に家族会議を重ねて話し合っておくこと、そして二人が一緒にいてとても幸せなんだと理解してもらうことが大切です。

 Q シニアになってから新たなパートナーを求めるのはなぜなのでしょう。
 A スーペリアの会員アンケートでは、ナンバーワンは「老後を一緒に過ごせる人がほしい」。まず寂しさを埋めたいという心情、そして老後の不安があります。つまり、自分や相手が要介護になる可能性も認めた上で、互いに面倒をみる覚悟が必要です。恋愛のきれいな部分だけでなく、シビアな現実もしっかり理解しましょう。
 また、会員の45・7%が結婚を求めている一方、48%が事実婚や恋愛関係など法律婚にとらわれないパートナーを探しているというデータがあります。
 この背景には、男性と女性で相手に求めるものが異なる傾向があります。男性は20~30代のころと同様の結婚イメージを持ち、一緒に住んでご飯を作ってもらいたいと思いがち。一方、女性はこれまでに両親や夫、子どもたちの世話をしてきた人が多く、同居や家事はもうこりごりというのがよくあるパターン。一方的に自分のイメージを押しつけるとうまくいきません。互いの違いを認識し、少しずつ距離を縮めましょう。

 Q 実際にどうやって出会い、どのように仲を深めていくのですか。
 A 当社のようなパートナー探しサービスの業界では1対1のお見合い、複数人でのパーティーなどのイベント、アドバイザーのマッチングによる紹介などがメインです。長い人生経験から人を見る目を育んでいるシニアの場合は、たくさんの人と一度に出会えるイベントが特に人気。そこで気になる相手と出会ったら、映画や美術鑑賞など共通の趣味を通じてデートを重ね、深く知り合っていくのが王道です。

 Q シニア同士の恋愛対象として選ばれるためには、何が必要ですか。
 A 男性の場合、経済的な基盤を築いていることは非常に重要です。相手に不快を感じさせない清潔感も必要。よく「デートするならせめてジャケットを」とアドバイスしています。
 女性の場合も、清潔感や女性らしさは大切。あと、居心地の良い落ち着きや包容力が20~30代にはない魅力として映るでしょう。
 深く知り合うまでに見た目や資産、コミュニケーション能力などのスペックが有効なのも事実。ですが、人生を共にするパートナーとして最終的に人柄が最も大切なのは間違いありません。

 Q 印象に残っているシニアの成婚事例は。
 A 東京の企業でバリバリ仕事をこなす管理職の50代女性がいて、同世代のキャリアのある男性とゴールインされました。でも当初、彼女は毎日のように担当者に電話を掛けてきてはマッチング相手の愚痴をこぼしていました。職場で部下に厳しい彼女は、相手も減点法で見ていたのかもしれません。でも担当者が相手の長所を素直に認めるようアドバイスするうち、彼女自身に変化が生まれたのだと思います。

 Q 注意すべきポイントはありますか。
 A まず出会いサービスを利用する際は、運営企業のデータや実績をよく確認し、安易なうたい文句を信用しないこと。
 また、気に入った相手と出会っても、熱が入るあまり最初のうちから金銭のかかった贈り物やデートをするのは、相手が引いてしまったりトラブルの元になったりするので避けた方が無難でしょう。

 Q なんだか、すべての世代に共通することも多いですね。
 A そうです。よくアドバイスすることは「婚活は勢い、結婚は慎重に」。自分が外に出なければそうそう出会いはありません。パートナーがほしいなら、まずは行動あるのみです。
【国立社会保障・人口問題研究所の人口統計調査】 50歳以上の男性の初婚は2017年で5377件。00年の3439件の1・56倍。50歳時点の未婚率(15年)も男性が23・37%、女性が14・06%で年々増加傾向にある。一方、50歳時点の離別率(同年)は男性6・26%、女性10・18%で、00年と比較するとそれぞれ1・33倍、1・41倍となっている。

【スーペリアの会員】 男性が45・1%で平均61歳、女性が54・9%で平均56歳。いずれも何らかの職業に就いている人が多く、半数以上が会社員。男女ともに70%以上が「結婚経験あり」。パートナーを求めるシニアの中で実際に活動している人は女性は24%、男性は9%。男性は「いい歳をして」「面倒くさい」「方法が分からない」などの理由で行動に移せていない人が多い。また、会員の45・7%が結婚を求めている一方、48%が事実婚や恋愛関係など法律婚にとらわれないパートナーを探している。

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