まるで牢名主!?「保護されてあげるわよ!」とやってきた猫は、先住猫と「おしどり」夫婦に!

2021/06/01 12:50

お手手の白手袋が可愛いキャンディーちゃん。白いエプロンもキュート

野良猫が保護される際は、何をされるのか予想がつかないため暴れることが少なくありません。もし保護に失敗したなら、これまで以上に人間を警戒して保護が困難になります。

これを危惧して、保護に二の足を踏んでいたのが兵庫県のYさん夫妻です。家のガレージに白足袋が可愛いキジトラの女の子が居着いたのです。年の頃は1歳ほど。Y家にすでにいる男の子のジョバンニくんと同じぐらい。捨てる予定のマットレスの上にデーンと座り、まるで牢名主のよう。

さてどうしたものかと迷っていると、その白足袋ちゃんはガレージでなくテラスにも顔を見せるようになりました。そのテラスにいたのは、ジョバンニくんです。テラスの外から中でくつろぐジョバンニくんの姿を、じっと見つめる白足袋ちゃん。もしかすると……。

Y夫妻は捕獲機で白足袋ちゃんを保護するのを止め、普段ジョバンニくんが使っているキャリーバッグを捕獲に使うことにしました。保護する前に、ジョバンニくんを1回入れることを忘れません。

いよいよ、白足袋ちゃん保護の日。失敗は許されません。予想通りなら、白足袋ちゃんはジョバンニくんが使っているキャリーバッグに入るはず。ドキドキハラハラしながら白足袋ちゃんがデーンと座るガレージのマットレスへ。

「こちら、どうぞ」

思わず敬語になってしまいました。なにしろ牢名主ですから。キャリーバッグのふたを開けると予想通り、すっとキャリーバッグに入りました。そして、白足袋ちゃんは目でY夫妻に言いつけます。

「早く中に入れて」

大きな瞳でそう訴えますが、そうもいきません。このまま動物病院に連れていかれ、各種検査です。そこで分かったのは、顔に傷が多いということ。獣医師からは、「この子は気が強い子ですよ」と告げられました。向こう傷が多いのは、何事にも立ち向かっていった証拠ですから。他は異常なし、元気そのもの。

Y夫妻が牢名主というぐらい威圧感があり、獣医師から「気が強い」と称された白足袋ちゃんは、「キャンディー」と名づけられY家の子になりました。キャンディーちゃんもウキウキです。ようやくジョバンニくんの近くにいられるのですから。

ところが、そうは上手くいきません。検査結果が完全に出る2週間は、お父さんの書斎に隔離です。キャンディーちゃんは早くジョバンニくんに会いたいと何度も鳴きました。その声を聞き、ジョバンニくんも扉の前でおろおろうろうろ。

この時のことをY夫妻は、笑いながらこう言います。

「まるでロミオとジュリエットみたいでしたよ」

検査結果がシロと分かり、キャンディーちゃんは避妊手術を済ませます。これで晴れてジョバンニくんと一緒に過ごせるようになりました。もうベッタリです。

ジョバンニくんもようやく会えたキャンディーちゃんにメロメロです。色々と世話を焼き、尻に敷かれ幸せそう。

でも、ジョバンニくんが骨折をした時は、キャンディーちゃんが色々とお世話を焼いたんですって。毛づくろいをしたり、一緒に寝たり。普段はしない他の犬猫との取次ぎもしたのだそう。猫なのに「おしどり」夫婦です。

大好きなジョバンニくんと一緒に過ごせるようになったキャンディーちゃん。目的はジョバンニくんだけですから、人間含め他の家族はイマイチ。持前の威圧感を発揮し、触らせてもくれません。

普段の定位置は押し入れの上段。そこから下界の様子を眺めています。でも、牢名主のころのようにカッ!と目を見開かず、まるで仏様のような半眼です。慈愛に満ちた表情で、時折可愛い声も聞かせてくれるのだそう。

恋をしたキャンディーちゃんはジョバンニくんと過ごし愛を知り、向こう傷ばかりの時代とは違った自分になっているのかも知れません。いつまでもお幸せに。

でも、いつかモフらせてちょうだいね。

(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子) 関連ニュース SNSで人気の猫が致死率99.9%の病を発症 一時は40度台の高熱も 「むーくん頑張って!」ファンから多数の応援 「天国との架け橋」という名前をもらった片目の猫 短い生涯でも、とびっきりの愛情と優しさをくれた 野良猫のふん尿苦情増加 市が猫よけ器無料貸し出し


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