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政治・経済からゴシップまで、物事をわかりやすく解説するYouTuberが人気ですが…(※イメージ画像)
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政治・経済からゴシップまで、物事をわかりやすく解説するYouTuberが人気ですが…(※イメージ画像)

近年、問題視されているYouTuberによる不確かな情報の流布。中には意図的に視聴者の誤解を呼び、世論誘導しようという向きの者もいるから悪質だ。

なぜ人々はたやすくYouTuberの言葉を信じ込んでしまうのだろうか?今、Twitter上では作家のふろむださん(@fromdusktildawn)によるYouTuberへの分析が大きな注目を集めている。

■「もっともらしい理屈」と簡潔明快に言い切る手法

「正確な論拠に基づいて発信している」と見せかけるYoutuberの手法について、 ふろむださんは次のように投稿した。

「なぜ、科学的であることをウリにするYouTuberの論文紹介の方が、専門家のそれよりも多くの人に信用されるのかというと『いくつもの実験条件を満たした場合にだけその実験結果になる』と専門家は言うのに対し、YouTuberは実験条件の細部に言及せず、いつでも成立する法則であるかのように断定するから」

また「人気YouTuberが生まれる仕組み」について

「YouTuberが"人が言って欲しいこと"をもっともらしい理屈をつけて簡潔明快に言い切ると、それが事実かどうか気にせずに、信じたいことを信じる人たちは嬉しくなり、フォロワーになる」

「裏取して情報発信する人は裏取に時間を取られるため、動画・記事・本の生産量が少ない。一方、裏取しないで言い切りまくるYoutuber裏取コストがないため、短時間に大量のコンテンツを生産できる」

と、情報の粗製濫造に陥りやすい体質を指摘する。

一連の投稿に対し、SNSユーザー達からは

「"難しいことを分かりやすく説明する"というのは、一見優れたスキルに見えて実は多かれ少なかれ嘘が混じることになる。
"包括的な説明"というのは、多くの知識を持つ専門家ほど出来ないことなのかもなぁと思いますね。」

「これな!って思っちゃった。
もう、自分で調べる、実践や検証したりするってことをせずに聞きかじった斜め読みが正しい情報だと思ってる人が多い。
なんだか寂しい世界。」

「愚者は"自分が言って欲しいこと"を言ってくれる人を求める。正しい知識を理解するのは大変だから。自分の知識(たとえ間違っていても)と他者の知識が同じであることの確認作業をして安心したいだけ。」

「信じたいことを信じる人たちの多くは今回のように何かのタイミングで、気がついて卒業するのかもしれませんね。でも気づかない人たちはまだまだいるエコシステムです。」

「専門家の中でも、わかっていません、のような結論を最初に一言行ってくれる人が良いですね。」

など数々の賛同、共感の声が上がっているが、ふろむださんはどのような思いから今回の分析を投稿したのだろうか。お話をうかがってみた。

■「科学的」に隠された巧妙なレトリックと印象操作

中将タカノリ(以下「中将」):今回のご投稿のきっかけをお聞かせください。

ふろむだ:まず「YouTuberの論文紹介の方が、専門家のそれより信用される」というツイートについてですが…最近『最新研究から分かる 学習効率の高め方』という本を書くために一般の方向けの学習法の本を一通り調査しました。それらの本が根拠とする論文の実験手続きと実験データを読み込んで、著者がその論文から言えることを主張しているのか検証したところ、根拠とする論文からは言えないことを主張している記述が、多数見られました。

また、根拠とする論文の出典を示さない本については、Google論文検索などを使って関連論文を調べました。すると、論文が示す実験結果や専門家たちの見解からすると、学習効率を上げるとは思えない学習法も見つかりました。

さらにいやらしいのは、論文から言えないことを言っているわけではないけれども、巧妙な文章上のレトリックと印象操作で、論文から言えないことを読者が勝手に読み取って、読者が勝手に満足するように書いている記述が見られたことです。件のツイートは、その巧妙さを、一般の方にも分かりやすく伝えようとしたものです。

また、科学的であることをウリにしていない学習法の本であれば、「まあ、しょうがないかな」という気もしますが、科学的であることをウリにしているYouTuberの方が書いた本も、その手の巧妙な記述があることがひっかかりました。それで、件のツイートでは、「科学的であることをウリにするYouTuber」としたわけです。

■「喜ばれるものを」のジレンマ

中将:「人気YouTuberが生まれる仕組み」もメディアやネット社会の構造的な問題をわかりやすく指摘されていて反響がありました。

ふろむだ:これは、メディアを運営されている方には釈迦に説法のツイートですので、あんまり解説はいらないと思います。基本、コンテンツって読者に読まれるものを書かないといけないじゃないですか。それも、なによりもまず既存顧客やリピーターに喜ばれるものを作らなきゃいけない。

で、初期に発信したコンテンツによって、既存顧客がふるいにかけられますよね。そして、客層が偏っていく。するともう好むと好まざるとにかかわらずその客層に合わせたコンテンツを作らざるを得なくなっていく。

それは人気YouTuberも同じで、最初のボタンをかけ間違うと、どんどんどんどん変な方向へいっちゃう。「人気YouTuberが、間違ったことを言っている」と怒っている方をよく見かけるのですが、これは「その人気YouTuberが悪い」というだけでなく、こういう構造上の問題もあることを言いたかったのですね。

一般論なので、別に人気YouTuberでなくてもいいんですが、その一般論を代表する具体的なものを例として方が分かりやすいので、そのツイートではYouTuberとしました。最近ネットでYouTuberの話題がよく出るので「そういえば昔からYouTuberに関して、僕はこんなことを考えていたな」と思い出したのがきっかけになった感じですね。

中将:今回のご投稿への反響についてどのように思われますか?

ふろむだ:「YouTuberの論文紹介の方が、専門家のそれより信用される」というツイートで、YouTuber側や、YouTuberを支持する人たちを嘆く声が多かったのは、予想通りでした。予想外だったのは「専門家の説明が悪い」「専門家が無能」といった、専門家側を非難する声がけっこう大きな割合であったことですね。2割ぐらいはそういう声でした。

「人気YouTuberが生まれる仕組み」については、「いや、はなっから"信じたいものを信じる人たち"だけを相手にしているので、(4)~(6)はやらないだろ(※(4)~(6)については画像参照)」という声がありました。まあ、そういうYouTuberの方もいらっしゃるでしょうね。

「YouTuberというより、インフルエンサーだよね」と言うツッコミもありましたが、前述した通り一般論ですからYouTuberに限った話ではないです。

◇ ◇

膨大な情報量の中からまず「何が正しい情報か」を選別しなければならないというのが現代社会の難点だが、自らのイニシアチブのもとで情報に接しようという姿勢は大切にしたいものだ。

なお、ふろむださんは著書『最新研究から分かる 学習効率の高め方』で丁寧に論文の実験手続きと実験結果を読み込んだ上で、わかりやすく効率のいい学習法を紹介している。

理路整然としたその内容に触れることは情報選別の訓練にもなると思う。ご興味のある方はぜひチェックしていただきたい。

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)

2021/8/25
 

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