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豊田真由子
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豊田真由子

新型コロナに関して多くの情報があふれていますが、事実誤認や、刻一刻と変わっていく状況に応じたアップデートがなされていない場合も多いと感じますので、最近ご質問を受けることが多いものについて、書いていきたいと思います。

まずは、「新型コロナ陽性になって自宅療養の場合、医療機関にかかることもできず、ひたすらじっと耐えるしかない」という誤解についてです。

なお、今回は、自宅療養が可能とされる軽症(+中等症1)の方に、地域の診療所を中心にして、どうやって必要で有効な医療を受けていただくか、という話であり、入院治療が必要な重症患者の方等に対しては、以前より申し上げている、野戦病院設置などの別の対応が必要になります。

■新型コロナ陽性、あるいは、発熱などの症状がある場合、保健所の連絡を待たずに、診療所の治療を受けることができます

検査で新型コロナ陽性の結果が出た場合、検査機関(医療機関や民間の検査機関)から「陽性のため、居住地の保健所から連絡が行くので、その指示に従ってください。」と言われます。そして、保健所から連絡が来るまで数日を要する、あるいは、保健所から連絡が来ても、ただ自宅にいて、体温や血中酸素濃度を保健所に報告するだけで(逼迫している地域では、保健所とのやり取りがないこともあります)、医療機関の治療が受けられない、というお話を聞きます。(もちろん、これは、人員の不足といった政策上のことが根本的問題であり、保健所・自治体の方が、日々精一杯職務に取り組んでおられることは、言うまでもありません。)

あるいは、熱が出たため、心配になって近所の診療所に電話しても、「うちは新型コロナに対応していない」と言われて困った、とか、自治体の相談センターに電話してもなかなかつながらない、というお話も聞きます。

先日出演したテレビ番組でも、皆さんが思い込んでおられたのですが、新型コロナ陽性や疑いのある方が、「保健所の指示が無いと、医療機関の治療を受けられない」ということでは全くありません。陽性者や疑いのある方が、外出の自粛を求められるのは、「感染を広げないようにするため」であり、そこに気を付けていただいた上で、必要な治療はきちんと受けていただくべきです。

具合が悪い中で、悪化するかもしれない不安を抱えながら、ただただ自宅にいるというのはとてもつらいことですし、万が一、容態が急変して亡くなるといった事態は、なんとしても防がねばなりません。そのためにも、適時に適切な治療を受けることが必要です。

陽性が判明したら、あるいは、具合が悪いなコロナかなと思ったら、まずは、かかりつけ医(地域の診療所)にお電話してください。かかりつけ医が新型コロナに対応できない場合、あるいは、かかりつけ医がいない方は、各都道府県で、新型コロナ患者に対応できる医療機関のリスト等(下記は、各県のリンク先の載った厚労省HPです。なお、各自治体のHPを見ると、自治体ごとに「親切度」が違うのが気になります。)がありますので、電話で連絡してください。

そして予約をして、医療機関を受診することができます。状況によっては、患者が医療機関に出かけていくのではなく、電話やスマートフォンを使ったオンライン診療、そして、自宅に医師に来ていただく往診といった方法が可能な場合もあります。

制度的にも、実態的にも、最近よく言われる、「新型コロナが感染症法の『2類相当』であるために、すべてを保健所がコントロールしていて、患者側が直接医療機関とつながることができない」ということではありません。(地域によって、新型コロナに対応できる診療所が十分ではない、という問題はありますが、それは法律や制度の問題とは違います。)

こういったことは、2021年8月13日の厚労省通知「感染拡大地域における陽性者の家族等への検査について」において、「診療所の医師は、検査陽性者を確認した際には、保健所の判断が無くとも、さらにその家族等の濃厚な接触の可能性のある者に検査を促すこと。さらに保健所の連絡を待たず、必要な治療や保健指導を行うこと」という「期間限定の緊急事態措置の更なる強化に関する提言」(新型コロナウイルス感染症対策分科会)(令和3年8月12日)を引用する形で、示されています。

(※)新型コロナウイルスに関する相談・医療の情報や受診・相談センターの連絡先(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-kikokusyasessyokusya.html)

■抗体カクテル療法は、地域の診療所では投与できないが、有効と考えられている治療法は他にもいくつもある。感染爆発下で、開業医の尽力も求められている

早期(発症から7日以内)に投与することで、重症化を防ぐ効果を期待されている抗体カクテル療法は、現時点では、地域の診療所(※)では投与できません。厚労省の通知(2021年8月25日)により、入院だけではなく、「外来でも投与可能」と変更されましたが、この「外来」というのは、入院機能を持ち、24時間救急対応できる病院の外来部門、ということであり、少なくとも現時点において、診療所で投与が可能となったわけではありません。これは、投与後のアナフィラキシーショックなどに対応する必要があり、そうした機能を有した医療機関での取扱いに限定するという趣旨です。

(※)「診療所」と「病院」の区別
 イメージとしては、「診療所」は、いわゆる町のお医者さん、地域の「…クリニック」や「…医院」という開業医の医療機関で、一方、「病院」は、診療科が複数分かれていて、入院施設のある医療機関です。それぞれに役割や診療報酬上の取り扱い等が異なります。(医療法上、「診療所」は、入院施設を持たない、または、入院ベッドが19床以下の医療機関、「病院」は、入院ベッドの数が20床以上ある医療機関)

抗体カクテル療法のほかにも、有効と考えられる治療法は複数あり、新型コロナの治療薬として、現時点で日本で承認されているものは、抗体カクテル療法の他に、レムデシビル(RNA合成酵素阻害薬)、デキサメタゾン(ステロイド薬)、バリシチニブ(JAK阻害剤)があり、そのほか、有効性・安全性について検証中の「日本国内で入手できる薬剤の適応外使用」として、11種類が新型コロナ「診療の手引き」で紹介されています。

新型コロナ治療をしている診療所の医師の方に話を聞くと、例えば、抗炎症剤や、特にハイリスクの方にステロイドや在宅酸素療法を使用することで、早めに症状が改善していくケースが多く見られるとのことでした。

患者の苦しみを軽減する、本人や家族の不安をやわらげる、そして、軽症・中等症の方を重症化させない、といった点からも、感染爆発の今、地域の多くの診療所の方にがんばっていただきたいと思います。

積極的に取り組む診療所がある一方で、感染リスクや治療方法等について不安を感じ、対応できないという場合もあると聞きます。小さなクリニックで人員・設備に限界がある、といった場合もあると思います。基本的には肺炎症状といっても、新型コロナという新しい感染症に対応するというのは、医療従事者の方にとっても未知の経験でもあります。地域の医師会などが中心となって、診療所(開業医)の皆さんへの情報提供や治療法の研修等をしていただくことが、有用ではないかと思います。

地域の診療所も含め、医療従事者は「なんでもやるべき、なんでも耐えるべき」ではなく、社会も市民も、深い理解と協力の上で、誰もが互いにできることを精一杯やっていく、ということが、新型コロナを乗り越える上で、必要だと思います。

<参考資料>
「新型コロナウイルス感染症診療の手引き(第5版)」
「現在の使用可能な治療薬の情報について」(厚生労働省)
「新型コロナウイルス感染症における中和抗体薬「カシリビマブ及びイムデビマブ」の医療機関への配分について(質疑応答集の修正・追加)」(厚生労働省)

◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。

2021/9/1
 

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