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お客さんを出迎えるブルリ
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お客さんを出迎えるブルリ

 熊本市北区にある「BLUE LEAF(ブルーリーフ)」は、2人のパン職人が作る「楽しく美味しいパン」があるお店。共同で経営する久邊(くべ)幸弘さん(47)と、森本恵さん(44)は、いずれもパン職人歴24年のベテランだ。その道に入った頃から苦楽をともにし、2019年5月、長年の夢だった自分たちの店を開業した。

そんな2人の前に昨年11月、突然現れたのが「ブルリ」(オス、1歳)だ。ブルリは店内への出入りは禁止。店の敷地内にあるコンテナハウスで暮らしているが、ブルリがやってきて以来、スタッフの笑いは絶えず、お客さんも増え、夕方になると100種類以上あるパンは毎日ほぼ完売という人気ぶり。美味しいパンの香りとともに、ブルリは店に幸せを運んできてくれた。久邊さんと森本さんに、ブルリとの出会いなどを聞いた。

■突然現れた生後半年の子猫、ハムをもらって態度が豹変

久邊 ブルリは2020年11月25日、急に現れたんです。店裏にあるコンテナハウス前の丸い椅子の下にちょこんと座ってたんですよ。生後半年くらい。捨てられたのか、迷い猫か、どうしてそこにいたのかは今も謎です。白い毛は埃まみれでグレーに汚れ、すさんだ目をしていました。近づくとシャーッと警戒して逃げたので、翌日、ロースハムをあげてみました。すると、警戒しつつハムを奪ってまた逃げました。でも、その1時間後、僕の足元にやってきて急に体をスリスリ。ええっ、うそ!と(笑)。手のひらを返したように態度がコロッと変わったんです。その姿がとても愛おしくて(笑)。

久邊 僕が小学3年生のころ、実家で1年ほど猫を飼っていたことがあるんです。「チビ」という名の真っ白い猫でした。でも、ある日、突然いなくなってしまって…。姉と二人で周囲を探したのですがどこにもおらず、すごく悲しかったのを覚えています。以来、猫は飼っていませんが、ブルリが現れたとき、なんだかすごく懐かしい気持ちになりました。おそらく心の奥底で、チビのことが何十年間も、ずっと気になっていたのかもしれません。

森本 久邊くんは優しいからね。でも、この店はペット飼育不可なんですよ。なので、当初は新しい飼い主を探そうと募集したんです。なかなか見つからなかったんですが、1カ月ほどしてようやく「猫ちゃんを見せてください」と希望の方が現れました。そうしたら久邊くんは渋い顔をして、「本当に譲るのか?」と。だってここでは飼えないでしょ?と私が答えると、「それはそうだけど…」って。私もそのとき、ブルリに情が湧いていたので、どうしたらいいのかと複雑な気持ちでした。

久邊 新しい飼い主さんを探していたとはいえ、僕も森本も1カ月ほど一緒にずっと過ごしてきたので、いざ、本当にいなくなってしまうのかと思ったら、急に寂しくなっちゃって…。それでパンを作りながら、2人で泣いたんですよ。 

■大家さんに懇願、敷地内で飼えることに

森本 寂しいね、やっぱり手放したくないよねって、2人で号泣しました。じゃあ、ダメ元で大家さんに頼んで、なんとか飼えないか聞いてみようという話になり、電話してみると、「店の敷地内ならよかっちゃない?」とあっさりOKが出たんです。それで、譲渡希望の方には丁重に断りを入れ、店裏のコンテナハウス(冷暖房設備付き)の中で飼うことになり、晴れてスタッフの一員になりました(笑)。

久邊 鶏のササミをあげるとガツガツ食べるので、実は最初は「ササミ」っていう名前だったんですよ。友人らが「なんか違う」、「店名を縮めた名前の方がいい」とアドバイスをくれて、それで「ブルリ」になりました。 

久邊 冬は寒いだろうと、ブルリのために電気ストーブを購入し、コンテナハウスの前に竹の丸かごを置いて、中に毛布を敷いてあげたんですよ。そしたら気に入って、昼間はそこで寝てることが多くなりました。体をゴロンゴロンして寝返りを打つんですが、たまに仰向けの「へそ天」で寝ていることがあって、その姿がおかしくて(笑)。不思議なことに、へそ天で寝てるのを見かけた後は、お客さんがたくさん来られるんです。

■猫がへそ天で寝ていると、店が忙しくなる

森本 そうそう。私たちの間では「ブルリがへそ天で寝ていると、店が忙しくなる」というジンクスがあるんです(笑)。「あんな変な格好で寝てるから、きっと何かあるよ。お客さんがいっぱい来たりとか」と最初は久邊くんが言い出して。実際、へそ天で寝てるのを私たちが目撃した後は、必ず大勢の来客があり、なぜか忙しくなるんですよ(笑)。それでパンが完売すると、久邊くんは「今日もありがと」と言って、ご褒美にチュールをあげています。

森本 たぶん、ブルリがへそ天してると、スタッフ同士で笑いあったり報告しあったりするので笑顔が増え、店の雰囲気がよくなり、そんないい雰囲気が巡り巡ってお客さんを呼ぶのではないかと思っています。ブルリがやって来る前、久邊くんは真面目で怖い顔をしながら仕事してて、話しかけられないこともあったけど、いまは表情が柔和になり、よく笑うようになりました。

久邊 店のコンセプトは「楽しく美味しいパン屋さん」。ブルリのおかげで新商品のアイデアがひらめくこともあり、ますますお客さんに喜んでもらえるパンが作れています。ほんと、幸運の招き猫です。

森本 ブルリはいまや、癒しと笑いとご縁繋ぎの役割を兼ねた、店に欠かせないスタッフです。保護猫団体の方々をはじめ、猫雑貨屋さんや作家さんなど、猫関係の友人も増え、安心できる環境でのびのびと生きられる猫ばかりの世の中になればいいなと願うようになりました。店内で猫グッズを販売したり、庭で小規模なチャリティマルシェを催したりして、保護猫活動にも微力ながら協力していければと思っています。

【店名】「BLUE LEAF(ブルーリーフ)」
【住所】熊本市北区植木町円台寺94-1
【電話】096-240-2859
【営業時間】9:00~18:00、水曜日、第2、4火曜日は休み

(まいどなニュース特約・西松 宏)

2021/9/11
 

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