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昨年11月、肺がんでこの世を去ったゴールデンレトリバーのユズちゃん。ブリーダーの元で子犬を出産してきた繁殖引退犬だった(提供写真)
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昨年11月、肺がんでこの世を去ったゴールデンレトリバーのユズちゃん。ブリーダーの元で子犬を出産してきた繁殖引退犬だった(提供写真)

昨年11月、肺がんでこの世を去ったゴールデンレトリバーのユズちゃん。ブリーダー(繁殖業者)の元で子犬を出産してきた繁殖引退犬でした。6歳で引退し、里親の麻実さんのところに家族として迎えられた直後、肺がんが分かり長くて半年という余命宣告を受けたといいます。しかし、ユズちゃんは半年経たずにわずか3カ月で息を引き取りました。

3カ月の短い期間でしたが、ユズちゃんの天真爛漫に遊ぶ姿が今でも愛おしく忘れられないという麻実さん。

「ユズは6歳4カ月で家庭犬として第二の“犬生”を歩み始めましたが、残念ながら3カ月後、肺がんのため、6歳7カ月でお空の星となりました。ユズのように繁殖犬としての仕事を終えて里親を待つ子たちがたくさんいます。新たにワンちゃんを飼いたいと考えている方に、繁殖引退犬を迎えるという選択肢があることを知ってもらいたい」と話します。

■ペットショップで売れ残りの子犬を迎えてから1年…その母犬が繁殖引退犬だった

ユズちゃんを迎えるきっかけとなったのは、ゴールデンレトリバーのジンジャーブレッド(以下、ジン)くん(雄、2歳半)を飼い始めてから1年ほど経ったときのこと。ふとジンくんの生みの親のことを調べてみようと思ったといいます。

「ジンは、2年ほど前にホームセンターのペットショップで売れ残っていたワンちゃんでした。そのときのジンは、生後3カ月でやっと4キロという極小のゴールデンレトリバー。あまりにもやせていたので、ショップの人にご飯の量を聞いたところ、小型犬の子犬が食べる程度の量しかもらっていないことが分かって。憤慨した夫がジンを購入し、我が家で迎えました。

それから1年経ったあるとき、ジンの両親のことが気になり、購入した際にもらった母犬や父犬の名前と写真、それとブリーダーの所在地が記載された資料を元にネットで検索してみたんです。すると、偶然にも母犬、父犬2匹とも繁殖引退犬として里親募集されていました。その母犬がユズでした」

ブリーダーに問い合わせをして、すぐにジンくんの両親に会いに行ったという麻実さん。しかし、父犬については「おそらく、がんです」と告げられたそうです。

「父犬はがんを患い去勢手術ができないような状態でした。去勢をしていないと先住犬とけんかになる可能性もあり、我が家の同居は難しいかもしれないと思いまして…2匹とも引き取る予定で行きましたが、涙を飲んでユズだけにしました」

■昨年9月にがんが発覚、最後に“親子水入らず”の日々を送ることができた

こうして昨年8月29日、先住犬たちにも迎えられ、麻実さんのおうちでの生活をスタートさせたユズちゃん。麻実さんによると、愛想は良かったものの、来たばかりのころは自己主張が強く、先住犬と衝突することもあったとか。特に食べ物やおもちゃに対する執着が強く、ユズちゃんは自分のご飯を完食すると先住犬たちのボウルにめがけて突っ込んでいき、奪い取ろうとしたことも。元野犬の風花ちゃん(雌、3歳)とけんかになることがあったといいます。

ただ、引き取って2週間ほど経ったころからその自己主張のきついところも消え始め、表情が柔らかくなったというユズちゃん。また、家の中で生活したことがなかったため、階段の登り降りができなかったり、ソファに上がれなくてピーピー鳴いたりしたそうですが、先住犬のまねをしてすぐにできるようになったといいます。

一方で、同年9月に健康診断で訪れた動物病院でユズちゃんの肺がんが発覚しました。肺に4センチを超える腫瘍が複数できており、避妊手術はもちろんのこと腫瘍の外科的切除も不可能な状態。ここで、長くても半年と余命を告げられました。

「組織球性肉腫というがんでした。症状が出ていなかったため、ブリーダーさんはユズのがんを把握していなかったようです。引き取った数日後に動物病院で健康診断を受け、できるだけ早く避妊手術をしたいとお願いしたところ、検査結果が『手術不適応』。病院でユズの余命を聞いたのは夫でしたが、家で待っていた私はLINEで知らされてとても受け入れられませんでした。今でも忘れられない日です。ユズのがんは放射線や抗がん剤の効果が期待できるレベルは過ぎていたので、QOL(生活の質)の維持だけを考えてユズの余生をサポートしました」

第二の“犬生”をスタートしたばかりのユズちゃんの余命宣告。里親となった矢先の出来事に、大きな戸惑いを感じたという麻実さんですが、「ユズに少しでも快適な毎日を送ってほしい」…それだけを考えてともに過ごしたといいます。

2カ月ほどは、庭でボールを追い掛けて走れるほど元気だったユズちゃん。予想外にがんの進行は早く、11月に入り腫瘍が脳に転移。頬や首などにも触って分かるくらいの腫瘍が増えていったそうです。ただ、ユズちゃんは息子のジンくんとの再会を果たせたことで、最後に親子水入らずの日々を送ることができました。

「親子と認識しているわけではないと思いますが、ユズはジンととても仲が良かったです。おもちゃで遊ぶときも、テーブルの下でガムをかじるときも、寝るときも、よく二人並んでいました。それに、へそ天の状態でボーッとするところもそっくりでした」

しかし闘病生活もわずかで終わり、ユズちゃんは昨年11月23日に静かに息を引き取りました。

■繁殖引退犬との出会いと死が大きな転機に「余生を過ごせる終生飼養ホームを作りたい」

ユズちゃんがこの世から去ってもうすぐ1年が経とうとしています。繁殖引退犬だったユズちゃんとの出会いは麻実さんにとって大きな転機となりました。

「ユズはブリーダーの元でたくさんの子犬を産んできたと思います。生まれた子犬は、ジンのようにペットショップなどで売られます。売れ残ってしまったら、ブリーダーへ戻され繁殖に使われる子もいれば、ふれあい施設に販売されたり、動物実験用に売られたり。あるいは悪質なフリーダーに戻れば業者であることを隠して保健所に持ち込まれて殺処分されたりするそうです。一部の幸運な子はショップの店員さんに家族にしてもらえたり、里親を探してもらえるようですが、数は少ないと聞きます。ジンも私たちが購入しなければどんな運命をたどっていたことか…。

また、小型犬に帝王切開で繰り返し出産させるなどの虐待行為に近いフリーダーがいると聞いています。利益が出ないのかも知れませんが、大型犬も含めて出産は身体に大きな負担になり生涯出産回数ももっと減らしてほしい。そして、繁殖犬こそしっかり健康管理をし、病気になったら放置せずきちんと治療してもらいたいです。引退時に心も身体も健康であれば、家庭犬として第二の“犬生”を送ることができます。だからこそ、繁殖引退犬がのんびり余生を過ごせる居場所を作りたいんです」

麻実さんのおうちには現在、バーニーズマウンテンドッグのクーパーくん(4歳)とエリーローズちゃん(4歳)、山口県周南市からやってきた野犬の風花ちゃん(3歳)、そしてジンくんの4匹のワンちゃんと、保護猫のデューくん(4歳)がいます。

今いる飼い犬・猫だけではなく、将来、繁殖引退犬をはじめ遺棄された老犬・老猫などがペットとしてのんびり余生を過ごすことができるような、小規模な終生飼養ホームを運営したいという麻実さん。「居場所のなくなった子のために、頑張ってきた子たちのために受け入れる数に限りはありますが、少しでも私たちが温かい愛情を注いでいけたら」と話してくれました。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

2021/10/9
 

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