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【ビフォー写真】保護された当初は強い警戒心と噛み癖が際立っていたノーマン
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【ビフォー写真】保護された当初は強い警戒心と噛み癖が際立っていたノーマン

広島にあるペット保護・譲渡活動を行うピースワンコ・ジャパンは、これまで広島県内の殺処分対象の犬を引き取り、過去7000頭以上を助けてきた団体です。「ドリームボックス」という犬の殺処分機の稼働を止め、日本全国の犬の「殺処分ゼロ」の実現を目指しています。

この団体では日々様々な犬の保護を行っていますが、その性格はもちろん様々で、中にはなかなか心を開いてくれないばかりか、凶暴な噛みつき犬も少なくないようです。今回紹介するノーマン、モン吉もいわゆる「噛み犬」でしたが、やがて人間と心を通わせるようになり、やさしい子になっていきます。ピースワンコ・ジャパン担当者に、モン吉のことや保護犬の定義や特徴と、同団体が行っている取り組みについて聞いてみました。

■ガリガリに痩せ、人間に対して歯を剥き出して威嚇するノーマン

2021年4月のこと。動物愛護センターのオリの中から、歯を剥き出して人間を威嚇する1匹の犬がいました。ガリガリに痩せた推定6歳の犬で、人間に対して警戒している様子。スタッフも「久しぶりにとんでもない子だ」と思ったそうですが、施設に連れて帰り、愛情を込めて接すれば必ず心を開いてくれると保護したそうです。

ところで、一度でも人間に噛み付いただけでレッテルを貼られ、そのまま殺処分になる例も少なくないそうです。ただし、こういった犬でも接し方、扱い方次第でガラッと態度が変わり「人間は敵じゃない」と考えるようになることもあります。

このノーマンもまさにそのような好例でした。当初施設に入ってしばらくは強い警戒心と噛み癖はそのままで、毎日毎日ノーマンの性格に合わせて距離感を保ちながら、「今日はこれができるようになった」「今日はこんなことを表現してくれた」と人にだんだん慣れていく様子をスタッフ同士で共有しあいながら、ノーマンのほうから近づいてきてくれることを待っていたそうです。

そして保護から約3ヶ月ほど経った2021年6月末、ついにノーマンのほうから人間に歩み寄ってくれるようになり、次第に撫でたらヘラヘラ、お腹を見せて嬉しそうな顔をするようになったとのこと。凶暴だった保護犬でも、人間が真から愛情を注げば「人間は敵じゃない。味方なんだ」と考えてくれ、心を開いてくれるようになっていくことを証明してくれました。「まだ完全に人間に対する警戒心が解けたわけではないものの、少しずつ少しずつ、過去のトラウマを忘れられるくらいのケアをしていきたい」と、担当者は語ってくれました。

■「今まで一番ヤバい犬」……ギラギラした鋭い目つきのモン吉

「今までで一番ヤバい犬がいる。どうにもならないから助けてほしい」といった連絡が寄せられました。この犬も噛み犬として殺処分対象だったところを助け出すことにしたそうですが、ギラギラした鋭い目つきはまさしく獣。同時にスタッフは「とても悲しそうだ」とも感じたそうです。後につけられた名前はモン吉。スタッフがかつて保護し愛情を注いでいた気性の荒い甲斐犬・モン太から名前をもらい、そう名付けられました。

モン吉は、捨て犬だったそうで人間への接し方からスタッフが感じたことは「生まれてきてから誰からも愛されず、優しくされなかったのではないか」ということでした。なぜなら、当初のモン吉には感情が感じられず、ギラギラした鋭い目つきだけが際立っていたからです。しかし、まず、自宅に連れて帰るとすぐに懐き、次第に視線を合わせると「クゥーン、クゥーン」と甘えた声で抱きつき、ときには猿のように頭まで登ってくることもあったそうです。

モン吉のように、人間から捨てられ、心に傷を負って、噛み犬と呼ばれ、人から警戒され誰からも愛されることなく生きてきた犬ほど辛い過去があると、言います。同時に、そういった犬に光を与え、殺処分から救うことができるのは人間だけだとも。今後のモン吉はもちろん、様々な犬を引き取り、殺処分ゼロにつなげていきたいと、スタッフは語ってくれました。

■人馴れトレーニングで譲渡につなげる他、譲渡できない犬も施設内で過ごし幸せになってもらう

ところで「保護犬」と呼ばれる犬のバックボーンには「野犬」「捨て犬」のおおむね2通りがあります。この点についてもスタッフに細かく解説してもらいました。

「『野犬』とは、山中などで暮らす野生の犬で、その多くが元々は人に飼われていて、あらゆる理由で捨てられたり脱走した後、野生化した犬を指します。そして、その犬たちが子どもを生み、どんどん野犬が増えていきます。また、野犬は人に懐いておらず、怯えてしまう犬が大半です。シェルターで愛情を込めて粘り強く接することで、次第に心を開いてくれるようになります。

一方、『捨て犬』とは飼育放棄された犬です。病気や障害が見つかったため、飼い主に捨てられた家庭犬もいれば、年老いて用済みになり捨てられた元猟犬もいます。『捨て犬』の多くは、人に対して警戒心をもっていない場合が多いです。それは、人とともに生活をしていたとき、かわいがられていた頃の記憶があるからだと思います。

また、何らかの拍子で飼い主を噛んでしまったことで『噛み犬』のレッテルをはられ見捨てられてしまった子もいます。

私たちピースワンコ・ジャパンの保護対象となる『捨て犬』のほとんどは、たとえ、捨てられた直後に自身が病気やケガによって心身ともにボロボロの状態であっても、なお人が大好きな子が多く『撫でて』『抱っこして』とすぐに甘えてきてくれます。その姿を見るたびに胸が詰まります」(ピースワンコ・ジャパン担当者)

他方、この「野犬」「捨て犬」という保護犬のカテゴリーは、あくまでもバックボーンの分類にすぎず、犬個々によって性格や心情は異なるため、同時に人馴れトレーニングのやり方も変わってくると言います。

「その子によって、人馴れトレーニングの内容やお世話の方法は全く異なります。人に懐いているワンコと一緒にみんなでドッグランで遊んでみたり、ときにはスタッフが自宅まで連れ帰り、お泊りの体験を通して人との距離を縮める取り組みもしています。

人馴れトレーニングのベースの知識として全スタッフに共有しているものの一つとして、様々な道具の名称や使い方から、犬の表情の意味の見分け方、犬の状態別のお散歩練習の注意点やアドバイスなど、あらゆる場面を想定した動画教材を作成し、共有しています」(ピースワンコ・ジャパン担当者)

こういった活動は、想像以上に大変なものですが、それでもなおピースワンコ・ジャパンが取り組みを続ける考えの源はどんなことかについても聞きました。

「保護した犬を最善の医療処置や人馴れトレーニングを行い、譲渡可能な犬は新しい飼い主さまへとつなげることを目指しています。なぜなら、こういった保護犬を飼う人が増えることで、殺処分問題を多くの人が考えるようになり、それをストップしようという社会の動きが出てくると期待しているからです。

また、譲渡が難しい犬も、スタッフが家族となり施設が家となり、ここで幸せになってもらいます。保護した全ての犬がそれぞれの幸せを掴んでもらうことがピースワンコ・ジャパンの活動です」(ピースワンコ・ジャパン担当者)

ノーマンとモン吉のヒストリーは、こういったアツい思いによって育まれたものでした。現在、ピースワンコ・ジャパンではより多くの保護犬を救うために、基盤強化を目指したシェルターの増設工事を決断。その費用の一部をクラウドファンディングでも募っています。是非一度チェックしてみてください。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

2022/6/24
 

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