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子連れの女性がホームレス男性を連れ込むという珍事が発生
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子連れの女性がホームレス男性を連れ込むという珍事が発生

小学生から「お母さんがいなくなった」との通報を受けた客室係が見たのは、昨夜チェックインした子連れの女性ではなく、髪がボサボサで無精ひげを生やした男だった。戻ってきた女性曰く「公園で知り合って……」。警備員時代に遭遇した珍事件だ。

■ベッドに知らない男の人が寝ている

警備という仕事は、社会の裏側を見る仕事でもある。「こんなことが起こるわけがない」と思われるようなことが、実際に起こっている現場に遭遇する。皇族が利用する高級ホテルも例外ではない。

平成元年4月のある日、朝6時40分頃、1階のフロントとは別に各フロアに設けられている客室係の事務所に、小学生くらいの男の子が現れた。

当直勤務についていたナイトマネージャーは、帰る部屋がわからなくなった迷子かと思い「どうしたの?」と優しく尋ねた。

「部屋で知らない男の人が寝ている」

ナイトマネージャーは、男の子の名前と泊まっている部屋番号をフロントへ照会した。前日に母親と一緒に914号室へチェックインしたが、男性はいなかったという。

「お母さんは?」

「朝起きたらいなかった……」

何かが起こっている。だが、チェックイン中の客室へ簡単に入ることはできない。客室は完全なプライベート空間であり、ひとたびチェックインすれば宿泊客の自宅も同然なのだ。

それでも「知らない男の人が寝ている」というのだから尋常な事態ではない。しかも一緒にチェックインした母親の行方が分からないという状況から、ナイトマネージャーは決断した。

マスターキーで部屋へ入るというので、警備員の立ち会いを求められた。異例の事態である。

まずは呼び鈴を鳴らすが、反応がない。強めに数回ノックしてみるが、やはり反応はなかった。ナイトマネージャーはマスターキーを差し込んだ。

「失礼いたします。緊急事態ですので入ります!」

恐る恐るベッドに近づくと、そこにはホテルの寝間着を着て寝ている男の姿があった。髪がボサボサで無精ひげ。この男のものと思われる脱ぎ散らかした着衣からは、異臭を放っていた。私たちが外周巡回でよく目にする、ホームレスそのものだった。

■公園からホームレスの男性を連れてきた母親

それにしても気持ちよさそうに眠っている。ナイトマネージャーと警備員の気配にまったく気付かないで、いびきをかいて眠っている。おそらくこんなフカフカのベッドでぐっすり眠ったのは、この男にとって何年ぶりのことなのかもしれない。

このまま寝かせておくわけにいかない。「ちょっとあんた。起きなさい」と、ナイトマネージャーが男の体を大きく揺さぶる。男はゆっくりと目を開けた。私たちの姿を見ても驚く様子はなく、平然としている。

「泊まり客じゃないね。どうやってここまで来たの?」

ナイトマネージャーが問い質すと、男はベッドに横になったまま「女に誘われた……」と答えた。

さらに「どこから来たのか」「いつからいるのか」など尋ねたが、男の受け答えは曖昧で要領を得ない。

そこへ、女性が入ってきた。私たちの物々しい様子に、目を丸くしている。

「お母さん!」

男の子が駆け寄った。

「どうしたんですか?」

女性が口を開いたが、訊きたいのはこっちのほうである。

「この子のお母さんですか。緊急の事情がございまして、マスターキーで入りました。失礼いたします」

ナイトマネージャーは経緯を説明した。

すると母親は「知り合いなので、連れて来ました」という。しかし男は「こんな女、知らねえよ」と否定した。男がいうには、ゆうべ公園で寝ていたら、この女性に誘われたらしい。男の子は「いつの間に……」と驚いている。

ゆうべ何があったのか。そこはプライベートな領域なので、ナイトマネージャーも敢えて尋ねなかった。だが、ホームレスの男性には出て行ってもらわないといけない。それと、一晩泊まった分の料金が発生している。これは男の子の母親が支払うことになったようだ。

言葉は悪いが、子連れの母親が公園でホームレスの男性を拾って、子どもを待たせてあるホテルの部屋へ連れて帰ってくるという、前代未聞の珍事だった。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

2022/7/1
 

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