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池の中に日本列島がある昆陽池公園  (C) Google
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池の中に日本列島がある昆陽池公園 (C) Google

兵庫県伊丹市の昆陽池(こやいけ)公園にある池に、「日本列島」が浮かんでいる。その形は空からしか見えないのに、なぜこのようなものが作られたのだろうか。

■もともとは奈良時代からある農業用水池

大阪国際空港(伊丹空港)から西へ約4kmの場所に、一風変わった公園がある。大小ふたつの池が森で囲まれた昆陽池公園だ。大きいほうの池、すなわち「自然池」と呼ばれている池に浮かぶのは、どう見ても日本列島だ。近くに空港があるため、周囲に背の高い建物は見当たらない。空から下を眺めて、はじめて日本列島の全体が見えるようになっている。

なぜそのようになったのか、昆陽池公園を所管する伊丹市の都市交通部みどり公園室公園課の協力を得て調べてみた。

歴史を紐解くと、池そのものは古くからあったようだ。東大寺の大仏を造立する際に尽力した奈良時代の高僧・行基が、灌漑と治水を目的として731年に池をつくった。はじめは「上池」と「下池」のふたつがあったと伝わっているが、新田開発のため1608年に下池が埋め立てられた。

時代は流れて高度成長期の1960年、民間企業が福利施設をつくるため一部を埋め立てて、36ヘクタールあった池の面積が28ヘクタールになった。

「このままでは池がなくなる」

昆陽池には、毎年冬になるとカモが飛来し、冬の風物詩になっていた。池がなくなると、カモの居場所もなくなってしまう。危機感をもった伊丹市は1968年、風致保存のために、池を含む周辺エリアを都市公園として整備した。

やがて伊丹市の人口が急激に増えたことに伴い、水道用水の確保が急務となり、昆陽池に貯水池機能をもつ公園化事業が1971年に決まった。この計画で昆陽池は、野鳥保全などを目的とした総合公園へ生まれ変わることになった。具体的には、公園の北側を「生き物のエリア」として樹林地を整備する一方、自然池の中ほどに野鳥が訪れて憩えるような島を整備する計画がつくられた。

■空から見たとき伊丹市のランドマークになるよう日本列島のカタチに

せっかく新しくつくるなら、ふつうの島では面白くないと考えるのが人情というもの。昆陽池公園は、伊丹空港の離陸コース直下にある。機内から見下ろしたとき伊丹市のランドマークになるようにと、日本列島の平面型にデザインされたのである。

この島の北海道・稚内にあたる場所から鹿児島まで、地図上の距離で300メートルほどある。人工の島なので、浸食に弱い。そのため、栗石と粘土で列島の汀線を覆い固めて「護岸」されている。

陸地部分は、今でこそさまざまな植物で覆われているが、つくられた当初は「自然の回復力に委ねる」との方針で、人工的に植えられたのはアカメヤナギとイノバラが数本だけだったそうだ。その後に姿を現したナンキンハゼやセンダンなどは、鳥が運んできた種が芽を出して根付いたと考えられている。

2003年に発表された報告資料「昆陽池公園の計画設計工事および管理運営の報告」には、「工事中、日本列島が形づくられたとたんに鳥(種類は不明)が卵を産みに来た」という記述がある。

池の周囲の陸地部分も、当時は敢えて成長した木を植えず、苗木を植えるていどにとどめられた。工事を終えて完成した当初は「これが公園か?」と思うほどの、荒涼とした風景だったという。それが50年近い年月を経て、鬱蒼とした森が生い茂る現在の姿になったのである。

その結果、現在の昆陽池公園には、年間130種類以上の野鳥が飛来するようになった。これは阪神間で確認できる野鳥の8割以上に及ぶという。また今年(2022年)は、初めてコウノトリの飛来が確認されている。

「当初の目的である『野鳥が憩える公園づくり』が一定の成果を収めました」(伊丹市都市交通部みどり公園室公園課)

一方で、野生動物が生息する姿もたびたび目撃されている。2003年頃からヌートリア、アライグマ、チョウセンイタチなど、外来種の哺乳動物が確認されているほか、2014年にはホンドタヌキの生息も確認された。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

2022/7/4
 

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