いくら仲が悪い夫婦であっても、もしも最後の別れが近いと分かっていたら、寂しくなってしまうものでしょう。漫画家の枇杷かな子さんの作品『母と父の最期の会話』では、そのような夫婦が描かれ、Instagramで1.2万件を超えるいいねがつき、注目されています。
枇杷さんのお父さんが亡くなる2週間ほど前の話です。お父さんが緩和病棟にいるお母さんのお見舞いにいきたいと連絡がきたことから始まります。お父さんとケンカ中だった枇杷さんは、夫に頼んで母のところへ連れて行ってもらうことに。家に帰ってくると、夫がお父さんとお母さんの病棟での様子を教えてくれました。
病棟では、お父さんがお母さんに「お前と話せないと寂しいよ」と悲しそうな様子で話しました。この話を聞いた枇杷さんは、お父さんはお母さんに今までしてきたことを後悔しているのかもしれないと思いました。
ほとんど話さないお母さんでしたが、何度も話しかけてくるお父さんに「しつこい」と言うのです。枇杷さんの夫は思わず笑いそうになりながらも我慢しましたが、お父さんは「しつこいかあ」といって笑っていました。お母さんに話してもらえてうれしかったのかもしれません。
また緩和病棟からの帰り道、車の中でお父さんは、「あいつより俺の方がいくの早いだろうなあ」とため息をついていたそうです。そして、母が言った「しつこい」の一言を何度も呟いたのでした。
読者からは「切ないです」「泣けます」という感想だけでなく「自分自身の体験がオーバーラップしていろいろな感情とともに思い出します」「自分の両親と重なりました」といった自身の過去と重なったという共感の声も多くあがっています。そこで作者の枇杷かな子さんに、同作について話を聞きました。
■母に反応してもらえたことがうれしかったのではないか
ー「しつこい」と言われたお父さんはどのように感じたと思いますか?
母に反応してもらえたこと自体が、うれしかったのではないかと思います。父への思いは複雑ですが、そうであってほしいという気持ちもあります。
ーお母さんが言った「しつこい」には、どんな意味が込められていると思いますか?
その時の母の気持ちそのものなので、理由を断言することはできません。ただ、元気だったころと同じように、父に対する腹立たしさや掛け合いのような気持ちが込められていたのではと感じています。
ーお父さんはなぜおでんを?
私への罪悪感があったのか、娘や家族に何かしてあげたいという思いがあったのかもしれません。はっきりとした理由はわかりませんが、その気持ちを受け取ったように感じています。
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(海川 まこと/漫画収集家)

























