昔のパートナーは皿洗いを明日でもいいと言ってくれた(B.B軍曹さん提供)
昔のパートナーは皿洗いを明日でもいいと言ってくれた(B.B軍曹さん提供)

「優しい人」と聞くと、誰もが良い印象を持つものです。しかし、その優しさが本当に相手のためになっているとは限りません。Instagramで日々の気づきを発信しているB.B軍曹さんが投稿した作品『優しいだけの人が信用されない理由』には、そんな優しさについて考えさせられる内容が描かれ、多くの反響が寄せられました。

ある日、体調が悪かった軍曹さんが当時のパートナーにそのことを伝えると、「皿洗いは明日すればいい」と声をかけられ、「優しいね」と返したといいます。しかしその数年後、現在の夫・髭さんと出会ってからは、体調が悪いとき、髭さんは「全部自分がやるから、寝ときなさい」と言ってくれたのです。

その言葉に、軍曹さんは思いやりを感じたと振り返ります。この出来事を通じて、軍曹さんは「優しい人」と「思いやりのある人」は似ているようで、実はまったく違うと気づいたといいます。その話を髭さんにすると、「優しい人は“言葉”まで、思いやりのある人は“行動”までできる人なんだよ」と答えてくれたのだそうです。

同作について、作者のB.B軍曹さんに話を聞きました。

■言葉よりも先に体が動く、その一歩が「思いやり」

ー「優しい」と「思いやり」の違いはどのように気づかれたのでしょうか?

相手のために動いたつもりが、結果的に自己満足で終わっていたことが多かったんです。たとえば、落ち込んでいる友人に「元気出して」と声をかけて満足していたけど、その友人が本当に欲しかったのは励ましの言葉ではなく、黙ってそばにいてくれることだった…とか。

「優しさ」は自分の中から出るもので、「思いやり」は相手の中に届くもの。この違いに気づいた時、「私の優しさって、ちゃんと届いてたのかな」と立ち止まったんです。そこから、相手の立場で考えることを、日常の中で意識するようになりました。

ー具体的に「思いやりがある人」とはどのような人だと思われますか?

相手の立場に立って、今何が一番必要かを冷静に考えられる人。そして「やってあげたい」ではなく「役に立ちたい」という気持ちで動ける人だと思います。思いやりのある人って、余裕があるわけでも、完璧な人でもなくて、見返りを求めない自然体の人なのかもしれません。

ー「これは思いやりだな」と感じた出来事はありますか?

病院勤務時代に毎日満員電車で通勤していたのですが、ある朝体調を崩して車内で立っていられなくなったことがありました。そのとき見知らぬ女性がすぐに駅員さんを呼んでくれて、「大丈夫ですか」と付き添ってくれたんです。

その方は私の名前も知らないし、二度と会うこともないだろうに、自分の予定を止めてまで他人に手を差し伸べるって、なかなかできることじゃない。その時、「これが思いやりなんだ」と強く感じました。言葉よりも先に体が動く優しさって、本当に人の心を救うんですよね。

「優しさ」は気づく力、「思いやり」は動く力。誰かのために動くその一歩が、人の心を温めるんだなと思いました。

(海川 まこと/漫画収集家)