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【特集】ギカイズム 近くて遠い議場の論理

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 およそ男女半々で成り立つこの社会で、地方議会は9割近くを男性が占める。議場のいびつな構成は長らく黙認されてきたが、今年5月、議員も半々を目指そうとする法律ができた。女性が増えれば議会はどう変わるのか。来春の統一地方選を控え、議会特有の流儀を見つめる月1回の特集をスタート。第1弾では、兵庫県内の女性議員の現状を追った。(石沢菜々子、井関 徹)

 兵庫県議の大前春代さん(34)は6月、自身のブログで妊娠を公表した。任期中に出産を迎える県議は2人目。予定日は12月上旬で、全議員が出席する定例会を休まざるを得ないと考えている。

 妊娠初期は体調不良で支援者らとの会合をドタキャンしたことも。「選挙で選ばれる立場なのでいろんな見方をされると思う」。それらを受け止める覚悟で、年明けには会社員の夫らの協力を得て復帰を目指す。「女性の社会進出の『壁』を取り除くため経験を役立てたい」

 7月上旬、地域の集いに神戸市議の平井真千子さん(42)が1歳の双子を連れて参加した。住民に顔を覚えてもらう地道な活動だ。

 かつて子連れの議員活動に対し「子どもで点を稼いでいる」と批判する声を聞いたことがある。同伴に気を使うが「そうしないと子どもと過ごす時間がない」との事情がある。

 双子を家族に預けて早朝からあいさつに回り、夜の会合にも顔を出す。合間に子育てもこなすため時間に制約があり、母親として迎える来春の改選に不安もにじむ。「ネットの発信だけでは票に結び付かない。動きが制限される中でどうすべきか」

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 議員は労働基準法が定める産休や育休制度の対象から外れる。妊娠や育児中の対応は各議会で異なり、議員活動との両立は個人の努力に委ねられている。

 昨秋、赤ちゃんを連れて議場に入り、処分を受けた熊本市議は「両立に悩む声を見える形にしたかった」と訴えた。これを機に昨年末、任期中に出産を経験した女性地方議員らが「出産議員ネットワーク」(約80人)を創設。妊娠などを理由に辞職や選挙に出ないよう求められた議員もおり、相談窓口をつくった。

 同ネット関西ブロック代表で伊丹市議の相崎佐和子さん(45)は「子育て中も政策決定に参加できるよう、代理人が採決できる制度などの整備を訴えたい」。

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 子育てとの両立以外にも女性議員が直面する壁はある。内閣府が昨秋、初めて実施した女性地方議員アンケートでは回答した1651人の6~7割が「家族や周囲の理解を得づらい」「政治は男性が行うという考え方が強い」を挙げた。

 幼い子を抱えて初当選し、2期目を務める兵庫県議の迎山志保さん(43)も「男性中心」を実感した。議員活動を頑張ると「(支える)旦那はえらいなあ」と言われた。すぐに結果を出せることは少なく、家族らに負い目を感じつつも議員としてできる役割に徹した。

 一方でやりがいもある。「子育て経験のない男性らが頭で考えた施策の不備を指摘し、弱い立場の声をキャッチし代弁できる。女性議員が3割いれば議会も変わる」

▼女性率首位の播磨町議会/教育、福祉きめ細かく対応

 女性議員が増えると何が変わるのか。兵庫県内で女性率が最も高い播磨町議会を訪ねた。

 町議14人中5人が女性で35・7%を占める。2007年の町議選では過去最多の8人が当選。4期目の清水ひろ子町長(69)と教育長、議長がいずれも女性の時期があった。

 奥田俊則議長(66)は「男性は土木関連の施策に目が向きがちだが、女性が多いので教育や福祉にきめ細かく対応できている」と評価する。実際、中学校給食の導入や子どもの医療費無料化が実現し、公立学校のエアコン整備などの決定を後押しした。

 「『女は出しゃばるな』という雰囲気の議会があると聞くが、ここでは気にならない。男性も女性も同じ」と木村晴恵副議長(62)。

 ではなぜ、女性議員が多いのか。木村副議長は「町では女性のサークルや消費者関連団体の活動が活発。女性が地域で活躍しており、立候補しやすい環境がある」とみる。

 一方で、2人はこんな事情にも触れた。「家族を養うなら議員報酬(月28万5千円)だけでは生活が厳しい。なり手が少ない中で女性が担い手になった面もある」(井関 徹)

▼近年変わらぬ女性割合/なり手不足、当選率は高く

 地方議会で活動する女性議員の割合は近年、ほとんど変わっていない。全国平均では2003年の7・9%に対し、17年は12・9%とわずかに5ポイント上昇。兵庫県内でも10・0%から14・7%の変化にとどまる。

 女性の進出を阻む要因に、出産や育児を想定した仕組みの不備がある。内閣府の女性議員アンケートでは、6割以上が議会の規定に「産前・産後休暇が明文化されていない」と回答。授乳室が「ない」は95・0%に上った。神戸新聞社の取材でも県内に授乳室がある議会は見当たらない。

 一方、特に町村議会で深刻な議員のなり手不足について、女性が解決の鍵を握るとの見方もある。ただ、アンケートでは選挙資金など経済的負担が進出を阻んでいる実態も浮かぶ。

 前回15年の統一地方選で女性候補者の当選率は、組織選になりやすい道府県議会は男性よりも低いが、市区議会や町村議会では上回った。女性議員を研究する京都女子大の竹安栄子(ひでこ)特命副学長は「女性は比較的当選しやすいが、現状は立候補する女性がいかに少ないかを示している」と話す。

 法律の施行で政党は男女の候補者数を均等にするよう求められるが、竹安特命副学長は「男性議員も立候補しやすい職業の人に偏りがち。多様な意見の反映を目指すなら議会のあり方から見直すべきだ」と指摘する。(井関 徹、石沢菜々子)

2018/9/14

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