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【特集】ギカイズム 近くて遠い議場の論理

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 最も身近な政治の場であるべき地方議会の活動が見えにくい。首長と並ぶ地方自治の両輪に例えられるが、全国の約9割の議会は首長が提出した議案をそのまま可決。行政の追認機関になり、チェック機能が果たせているのかも分からない。不信感は住民をさらに遠ざける。議会の存在意義とは何なのか。特集の第2弾は、兵庫県内議会の「見える化」に向けた取り組みを探った。(井関 徹、前川茂之)

 「賛成少数。よって議案は否決されました」

 西宮市議会(定数41、欠員1)は6月、初当選した石井登志郎市長による事実上の当初予算案を退けた。記録がある1971年以降では初となる予算案の否決に、庁内は「市長に出だしから恥をかかせた」と騒然となった。

 同市議会は4年前に思わぬ形で〝沈黙〟から覚めた。新聞記者への「殺すぞ」発言など、後に数々の騒動を起こした今村岳司前市長の就任で「ズブズブ」との批判もあった根回し政治が崩壊。2015年度の当初予算案を53年ぶりに修正し、16年度も一部の目玉事業を予算案から削除した。

 「議会と行政の信頼関係が完全に崩れた」と市幹部。一方で、「是々非々で審議する姿勢は本来のあるべき姿かもしれない」との声もある。

 石井市長は「対話路線」を打ち出すが、議会側は議案の可否を決める権利の行使をちらつかせ姿勢を注視する。

 「議決権を振りかざすだけでは市民の利益にならない」と篠原正寛副議長。「ガチンコで本会議に臨むか、事前の根回しでよりよい議案提出につなげるのか。試行錯誤を繰り返すしかない」

       ◇

 60年間にわたり当局追認を続ける県議会(定数87、欠員2)。その歴史は過半数を維持する最大会派自民(44人)の存在とも重なる。

 参画と協働の条例化(02年)など議会が修正を加えた例はある。だが、いずれも提案前の水面下で行われ、県民が目にする機会はほとんどなかった。

 ベテラン自民県議は「県が予算や条例を立案する過程で議論を交わし、提案もしている。県政を混乱させることなく、監視を果たす大人の対応」と説明。円滑な議会運営をもくろむ県側の思惑も絡み、都合のいい関係を築いてきた。

 議会をゆるがせた「野々村ショック」を受け改革を進めるが、知事与党3会派で圧倒的多数を占める議場の議論は低調。質疑での追及を重視する無所属議員は「見えないやりとりが不信感を生む。求められているのはプロセスを明らかにすることだ」と力を込める。

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 住民に近い存在を追い求める議会も現れている。

 西脇市議会(定数16、欠員1)は3年前、住民と意見を交わす「議会と語ろう会」を始めた。議会報告会を意見が出やすいワークショップ形式に変え、2年間で市内の全80自治会を巡っている。

 意見や要望は議員同士で議論し、市への申し入れや常任委員会での質問になる。その結果は書面で自治会側に報告している。

 「住民の意見は『政策の種』。議員はその種を拾い、いかにその後の政策につなげていくかが肝心」。無所属議員ながら議会改革をリードする林晴信議長は言う。

 本会議での一般質問はやるだけの予定調和で終わらせず、答弁結果を委員会で追跡して実現に結び付ける。「議会の華」から「華も実もある一般質問へ」を掲げる。

 軌道に乗り始めたが林議長は満足していない。「制度や枠組みはいくらでも作れる。いかに中身を充実させ、結果を出すか。議員の姿勢が問われている」

▼議員の政策立案/サポート人員不足、17年度は3件

 議員自らが政策的な条例を作る地方議会が現れている。ただ、行政当局に比べて情報量やサポート人員が圧倒的に少なく、定着するかどうかは見通せない。

 神戸新聞社が兵庫県と41市町の計42議会に尋ねたところ、2017年度に提出された総議案数は計5838件。最多は西宮市の257件だった。

 議会は首長から提出された議案をチェックする役割に加え、議員が議案を出すことができる。総議案数に対する議員提案は314件(5・4%)。件数の最多は県議会の41件(17・8%)で、川西市の27件(20・1%)が続いた。淡路市と香美町は「ゼロ」だった。

 議員提案の内容は議員報酬や議会運営に関わるものに加え、国への意見書などが大半を占めた。それ以外の政策条例で見れば、17年度は県議会の2件と、防犯灯の設置基準などを定めた上郡町の1件だった。

 総務省によると、県内で議員が提案した政策条例の可決数は、地酒での乾杯を勧める「乾杯条例」が広がった13年度の11件を除き、年間数件で推移している。

 「情報収集から素案作り、他会派との調整までかなり労力がかかる。人員も少ない」。条例作りを経験した神戸市議は打ち明ける。

 00年施行の地方分権一括法で、議会の条例制定権の範囲は拡大された。だが、議員の政策立案が低迷しているのは補佐役の「法務担当職員」の少なさが要因の一つという。県内で設置しているのは県議会(3人)や神戸市議会(1人)など、兼務を含めて7議会にとどまる。(若林幹夫)

▼議長選出/24議会立候補制導入、所信表明演説も

 地方議会をリードする議長。議員同士の調整や多数会派の持ち回りとなっている議会が多かったが、「選ばれ方が不透明」などの批判もあり、議長選に立候補制や所信表明演説を導入する議会が増えつつある。

 宝塚市議会は2007年、議長選出で水面下の調整がつかず、会期を9日間延長して急きょ立候補制を導入した。投票前に各候補者が5分間の所信表明を議場で行い、傍聴できる。

 議会事務局は「『改革する』と宣言すれば実現を目指す。議長が動けば他の議員も動く。議会改革が進む契機になった」と話す。

 地方自治法では議長は議員の中から選挙で選ぶと定めている。投票用紙に誰の名前を書いてもよく、原則として立候補は必要ない。一方で立候補制で議長になりたい議員が明確になる。

 兵庫県と41市町の計42議会で立候補制を導入しているのは24議会。大半で所信表明があり、うち7議会はインターネットなどで公開する。導入していないのは県や神戸市など大所帯の議会が多く、ベテランの神戸市議は「制度を変えても多数会派が調整で決め、意味がない」と語る。

 早稲田大マニフェスト研究所の昨年の調査では、立候補制を導入している都道府県や市区町村の議会は26%。ここ数年、わずかだが上昇傾向にある。(前川茂之)

2018/10/12

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