連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

【特集】ギカイズム 近くて遠い議場の論理

  • 印刷

 住民の声を行政などに届ける地方議員だが、仕事の内容はあまり知られていない。自治体ごとに期間の違いはあるが、全国で開かれている市議会の平均会期は約90日間。多くは年中開催されることはなく、その他の活動は各議員に委ねられている。まちの課題を考え、住民との交流で問題を探り、週末も地域のイベントに顔を出す。二足のわらじで生計を支える兼業議員もいる。特集の第3弾は、兵庫県内の市町で働く3人の議員に密着した。(井関 徹、前川茂之、若林幹夫)

▼香美町議4期目 西川誠一さん/水産業と兼業 現場の声代弁

 日本海で底引き網漁が解禁された9月。香美町議を務める西川誠一さん(63)の一日は香住漁港での競りで慌ただしく始まる。

 大正時代から続く水産加工業の3代目。解禁直後は最も忙しく、競り落としたカレイやハタハタを加工場に運び入れる。ひと息つく間もなくスーツに着替え、従業員に指示をして議場へ。年4回開かれる定例会と重なる時期でもある。

 「仲間から『商売もちゃんとやれよ』と言われるけど今は議員ファースト」

 もともと政治に興味はなかった。父親が旧香住町議だったが、1999年の引退時には後継を断った。村岡、美方町との合併が浮上して人ごとではなくなり、4年後の香住町議選で初当選。以来、合併後の二足のわらじも4期目となる。

 消費者の魚離れが進み、全国的に漁獲量も減る。4年前には魚食の普及を掲げる条例を議員提案した。この日の定例会では一般質問に立ち、水産業のさらなる活性化を促す施策の必要性を町側に問い掛けた。

 一方で兼業議員の限界を感じることもある。水産業にまつわる課題は経験を生かせるが、「もっと幅広い住民の声を代弁するには議員に専念する必要がある」。16人の全町議が農業や宿泊業などを兼ねている。

 若い世代の流出は続き、県内41市町で新温泉町に次いで低い議員報酬(月額21万4千円)がなり手不足に拍車を掛ける。合併後に4回あった町議選のうち2回は無投票だった。定数削減が議論されたこともある。

 夕方、議会を終えて戻った加工場で商品の出来を確かめていた西川さんがぽつりと言った。「子育て世代に仕事を辞めてまで議員になってくれとは言えない。でも、議会が活力を失えば町も活気を失う」。自問の日々が続く。

▼丹波市議1期目 小橋昭彦さん/市民と交流 課題解決目指す

 「議会って知ってる?」

 丹波市議の小橋昭彦さん(53)の問い掛けに、小学生らは首を左右に振った。

 当選1回の新人議員10人でつくる会派(グループ)が10月下旬に開いた「丹新カフェ」。週末などのイベントで市民の相談に乗るが、この日も参加者は少なかった。それでも「議員の姿を見てもらうことに意義がある」と力を込める。

 16年前まで東京でコピーライターなどをしていた。「子どもを自然の中で育てたい」と思い、古里の丹波市にUターン。NPO法人や町おこし会社を設立し、多彩な地域活動を展開してきた。

 2016年の市議選で、地元地区選出の議員が引退するのに伴い立候補。定数20に現職13人、新人15人が立候補する激戦となり、11人の新人が初当選した。

 「改選前の議会はポスト争いなど内輪もめばかりで、目線が市民に向いていないように見えた」。思いを同じくする新人で会派を立ち上げ、最大勢力となる異色の構図になった。

 約50万円あった月収は33万円に。子ども3人の学費もあり貯金を取り崩して暮らす。全国の地方議員と意見交換し、インターネットや書籍から情報を集める傍ら、地域活動で培った人脈を生かして市民と交流しながら課題に目を向ける。

 ただ、議会に新風を吹き込もうとした最大会派も壁にぶつかっている。政策提案できる議会を目指すが、この2年間、問題のあった決算1件を不認定としたものの、約400件の市長提案の議案をそのまま可決。「丸のみしている」との批判は根強く残る。

 「審議する議案がこんなに多いと思わなかった。少数意見も無視できず、議会が同じ方向を向くのはなかなか難しい」。民意の重さを改めて痛感している。

▼加古川市議3期目 中村亮太さん/対話重視イベント積極参加

 秋晴れとなった文化の日。加古川市内の高校で開かれたグラウンドゴルフ大会の会場に同市議の中村亮太さん(37)の姿があった。

 お年寄りや子どもらとプレーを楽しみ、すっかり顔なじみになった住民と談笑をかわす。困りごとの相談を受けることもある。「サラリーマン時代より休みが減った。でもやりたい仕事をさせてもらっているので苦じゃない」と笑う。

 大学生の時に政治に関心を持った。ボランティアで選挙活動を手伝い、市会議員のインターンも経験。卒業後は企業に勤めたが、2009年の政権交代選挙で当選した衆院議員の依頼を受けて秘書に転身した。

 翌年の同市議選に民主党公認で立候補。地元だが確たる地盤はなく、〝風〟を頼って空中戦を展開した。29歳。加古川市議では最年少の初当選だった。

 いつか弱まる風を見越し、地域とのつながりを重視。町内会の役員会に参加し、大半のイベントに出席した。市政報告書を作って配り、住民の要望を受けて行政との仲介もした。「大きな政策テーマも重要だが、地に足を着けた活動も大事。生活者の声を聞かないと方向性を間違える」

 党が下野して1年後に離党し、2期目には若手3人で会派を結成。古い議会の体質を変えるため、あえて保守系の別会派と新たな会派を組んだ。今年6月の改選では定数31に新人10人が当選し、女性が得票順位の1~4位を占めた。変革の機運は高まりつつある。

 中村さんは12月に会派で開く市政報告会のチラシを見せてくれた。まちづくり関連の著名人の講演会を初めて組み入れた。市民を巻き込んだ議論を期待する。

 「街を良くするには議員だけでなく、市民にも考えてもらう必要がある。議会として後押しを続けたい」

2018/11/9

天気(12月12日)

  • 13℃
  • 8℃
  • 10%

  • 9℃
  • 6℃
  • 50%

  • 13℃
  • 8℃
  • 20%

  • 12℃
  • 7℃
  • 20%

お知らせ