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【特集】ギカイズム 近くて遠い議場の論理

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 町村議会を中心に全国の地方議会がなり手不足にあえいでいる。「平成の大合併」に伴う自治体数の減少に加え、議員の厚遇批判や深刻な財政難を受けて議会のスリム化は進んだが、全国で無投票が相次ぐ。3月には総務省の有識者研究会が新たな議会のイメージを示し、波紋を呼んだ。議会への信頼を築き、政治参加を増やす方策はあるのか。兵庫県内の町議会が抱える苦悩を探った。(井関 徹、上杉順子、若林幹夫)

 神戸や明石、加古川市に隣接し、「都市に近い田園のまち」を掲げる稲美町(人口約3万1千人)で2015年、思わぬ事態が起きた。町議選(定数16)に立候補した18人のうち3人が法定得票に届かず、欠員が生じた。無投票がささやかれ、駆け込みで立候補者が出たものの、訴えは十分に届かなかった。

 その4年前、住民からある直接請求が町に出されていた。定数を10に減らし、議員報酬を月額5万円引き上げる-。待遇を改善し、活動に専念できる少数精鋭の議会にする意図があった。請求を受けた町が条例改正案を提出したが、当時の議会は「議員が減ると多様な意見が反映されない」と否決した。

 「改めて住民の意思を突き付けられた」。赤松愛一郎議長(59)は欠員が出た選挙を振り返る。改選後の議会は、町民の意見を募って定数の見直しを議論。来年の町議選は定数14を争うことになる。

 ただ、削減が即なり手不足の解消につながるわけではない。当選ラインが上がり、立候補を尻込みさせる可能性もある。「どんな活動をしているか、魅力を伝える努力を続けたい」。〝特効薬〟が見つからない中、模索が続く。

 浜坂、温泉の両町の合併で、05年に誕生した新温泉町(人口約1万5千人)。人口の流出は著しいが、過去4回の町議選はいずれも無投票を免れた。

 昨年の前回選も直前まで無投票が予想されたが、定数16に18人が立候補し、8年ぶりの女性当選を含め、新人8人が誕生した。「無投票にさせたくないという思惑が働き、たまたま選挙になっただけ」。中井勝議長(59)は結果を冷静に見る。

 欠員を避けるため若者に立候補を促したが手応えはなかった。子育て世帯の声を町政に届け、地場産業の畜産業を振興させるため39歳で手を挙げた自身の頃とは違う。「『議員になって何ができるのか』と問われると説得しきれない」。ただ、前回選で町職員から転身した40代の議員が誕生した。町の将来を危惧して自ら変えようとする民意がかすかに見える。

 中、加美、八千代の3町で発足した多可町(人口約2万1千人)は昨年、合併後初めて町議選(定数14)で無投票を経験した。

 「若者が立候補する予定だったが、議員報酬の少なさを知ってやめてしまった」。県町議会議長会長も務める清水俊博議長(69)が舞台裏を明かす。

 同町の議員報酬は月額21万5千円で、新温泉町、香美町に次いで県内3番目に低い。議員厚遇への批判や自治体の財政難を背景に抑えられ、定数も05年の合併から間もなく4減らした。「県内の多くの町議会は報酬が少なく、議員数も減って疲弊している」

 多可町議会では、町政に関する高校生の質問に議員が答える機会や、各種団体との意見交換会を開いてきた。「負のスパイラルを断ち切り、もっと存在意義を示すしかない」。町民と議員が議論を交わし、政策を提言する「政策サポーター」制度を導入し、政治参加の裾野を広げる検討も始まっている。

▼兼業議員の環境整備/長野・喬木村 夜間・休日議会を導入

 幅広い議員のなり手確保を目指し、仕事を続けながら議員活動ができるように「夜間・休日議会」を取り入れた議会がある。

 長野県南部に位置する人口約6千人の喬木(たかぎ)村。昨年の村議選(定数12)が8年ぶりに無投票となり、農業・自営業中心の構成から、半数が会社員らに代わったことがきっかけだった。

 議員報酬は月額14万3千円と町村議員の全国平均を下回る。兼業でも活動しやすい環境を整えるため、昨年12月から主な議会日程を夜間・休日に移した。

 「議会に魅力がないからなり手がいない。名誉職のような議員はもういらない。若者や女性らの意見も吸い上げ、議会の質を高めたかった」。取り組みをリードする下岡幸文議長(63)は振り返る。「できない理由より、できる方法を考えようと提案した」

 原則として常任委員会を夜間の2時間、一般質問は休日の昼間に開催。「十分な議論ができるのか」との声もあったが、事前準備で議題を共有し効率化した。議案を熟慮する時間が増え、議員のスキルアップにもつながっているという。

 住民に分かりやすい議会にするため、一般質問の資料を事前に公表。定例会を終えるごとに村長に提言書を提出するようにした。

 今年11月、住民アンケートも踏まえ、夜間・休日議会の継続を決めた。下岡議長は「議員が役割を果たせたと言える状況にはなっていない。まだまだこれから」と、改革に向けて気を引き締める。(井関 徹)

▼地方議会見直し/地域の実情に合った改革を

 地方議員の定数はこの20年で大きく減った。1998年に約6万人(都道府県議を除く)だったが、「平成の大合併」を経て2016年には半減した。一方で、過疎・高齢化が進む小規模自治体でなり手不足が顕在化。15年の統一地方選で改選された町村議会のうち無投票は約2割に上り、人口千人未満の議会で6割を超えた。

 高知県大川村が昨年、議会に代わり住民が予算案などを直接審議する村総会の検討を一時表明し、担い手確保の議論が活発化した。

 総務省の有識者研究会は今年3月、議員の兼業・兼職制限を緩和する「多数参画型」と、少数の専業的議員で構成し重要議案の審議で住民参加を認める「集中専門型」を提言した=表。

 現行制度に加え、二つのモデルをパッケージで選ぶ内容で、全国町村議会議長会は「地方議会の環境は地域で異なり、類型化できない」と指摘。国からの押しつけは地方分権に逆行するとして現行での兼業禁止の緩和などを求めている。

 同議長会で提言を議論してきた検討委員会の副委員長を務める清水俊博・多可町議会議長は「多くの町村では合併で地域が広がったが、議員数は減って負担感が増した。報酬だけで生活するのも難しい。定数を減らしても人材が集まるとは限らず、多数にしても政治に関心を向けなければ意味がない」と話す。(井関 徹)

2018/12/14

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