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【特集】ギカイズム 近くて遠い議場の論理

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4月の兵庫県議選の立候補予定者に対して開かれた説明会=神戸市中央区下山手通4(撮影・辰巳直之)
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4月の兵庫県議選の立候補予定者に対して開かれた説明会=神戸市中央区下山手通4(撮影・辰巳直之)

4月の兵庫県議選の立候補予定者に対して開かれた説明会=神戸市中央区下山手通4(撮影・辰巳直之)

4月の兵庫県議選の立候補予定者に対して開かれた説明会=神戸市中央区下山手通4(撮影・辰巳直之)

 地方選挙は住民にとって最も身近な選挙と言える。かつて「地盤」(組織)、「看板」(知名度)、「かばん」(資金)があれば有利とされたが、ネット選挙の解禁や18歳選挙権の導入で様子が変わりつつある。一方、投票率は国政選挙も含めて低下が続き、関心は薄れてきている。議会の流儀を見つめてきた特集の最終回では、近づく統一地方選を見据え、選挙の現場を追った。(井関 徹)

 「もう一度、市政の場に送り込んでください」

 昨年10月にあった加東市議選(定数16)。4選を果たした小川忠市さん(59)は7日間、選挙カーで市内をくまなく巡った。

 ウグイス嬢がマイクで支援を訴え、手を振ってくれる人がいれば駆け寄って握手する。お年寄りが広場でゲートボールをしていれば、その場で演説をした。いわゆる「どぶ板選挙」に徹した。

 立候補に必要な供託金は30万円。準備期間や選挙活動にざっと70万円を費やした。毎月の議員報酬35万円から資金をためた。

 18歳の時、兵庫県外から移住して旧社町内で就職。地盤はなかったが、2006年の3町合併による市発足後の市議選に出た。

 定数20に32人が立つ混戦だったが、900票近くを得て上位で当選。だが、4年後は得票を減らし、辛うじて再選した。「初当選でてんぐになり活動が低調だった」

 教訓を踏まえ、年4回の議会リポートを欠かさず作り、議会での質問も精力的にこなす。市長の施策にも厳しい視線を向ける。

 「4年ごとの選挙は議員活動に対する通信簿。本当に怖い。有権者はつぶさに見ている」

       ◇

 4月の統一地方選は、13年の参院選で「ネット選挙」が解禁されて以降、2度目となる。

 選挙期間中、ソーシャルメディアで特定の候補者を応援できる。街頭演説をいつでも動画で見ることができ、判断材料が増えた。

 公益財団法人明るい選挙推進協会によると、政治や選挙の情報源にネットを挙げる人が増加。17年の前回衆院選ではテレビが約6割を占め、約19%の新聞に次いでネットは約13%だった。18~49歳に限れば新聞を上回った。

 ただ、地方選挙は日頃の活動の積み重ねが票に直結するとされ、ネット選挙だけで当落を左右することは珍しいとみられる。

 日本選挙キャンペーン協会(東京)理事で、選挙名簿管理ソフト会社を営む北村豊さん(56)=芦屋市=は「直接的な人とのつながりがあるからこそ、意見や声を吸い上げることができる」と強調。同社の顧客は国会議員や地方議員ら2千人以上といい、「名簿管理をしっかりしている議員は選挙に強く、有権者を大事にしている」と話す。

       ◇

 「冬場の選挙は防寒が大事。選挙カーは窓を全開にしないと失礼になるから」

 今月1日、神戸市内で開かれた勉強会。兵庫や東海地域などの若手地方議員らでつくるグループ「TORYUMON(登竜門)」が、政治家志望の若者に選挙のノウハウを伝えようと企画した。

 市町議員3人が講師を務め、選挙運動のスケジュールなどを伝達。助言した高砂市議の島津明香(はるか)さん(31)=2期目=には議員を身近に感じてもらいたいとの思いがある。

 大学時代、たまたま参加した議員のインターンシップで興味を持った。地盤も実績もないが、知り合いの議員に教わり立候補した14年の市議選(当時定数21)では、若さと女性をアピールして2600票余りでトップ当選。市会の歴史で5人目の女性議員となった。

 「選挙に出る決断をして動くまでのハードルが高い。私には身近な議員がいたが、そうでなければなり方が分からない」

 自らもインターンを受け入れ、若者と触れ合う機会を意識的に設ける。「同世代が一人でも多く議員になれば、若い意見で議会や行政も変わる」。そう信じている。

▼若者と政治をつなぐ/主権者教育で投票率向上狙う

 若者の政治参加を促すため、2016年から「18歳以上」に引き下げられた選挙権だが、投票率はふるわない。兵庫県内では前回衆院選の10代投票率が32・08%(全国40・49%)と全国ワースト2位。若者と政治をつなぐ仕組みが求められる。

 「学生向け給付型奨学金の拡充」「被選挙権年齢の引き下げ」-。18歳選挙権の導入以降、2度目の国政選挙となった17年の衆院選で、各党は若者を意識した政策を掲げた。

 自治体も大学内に期日前投票所を設け、模擬投票を行って関心を引く取り組みも展開した。だが、10代の投票率は前年の参院選(全国46・78%、県内44・74%)を下回った。

 こうした状況を踏まえ、県教育委員会は18年度、高校生向け主権者教育の指導事例集を改訂。小学校の統廃合など地域の課題について生徒が意見を出し合い、合意形成のプロセスを学ぶ授業を始めた。

 改訂に携わった尼崎小田高校の福田秀志教諭は「若者の投票率が低いのは政治を身近に感じられないから」と分析。「『自分ならこの町をどうするか』と被選挙者の視点を持ってもらいたかった」と語る。

 高校では22年度以降、「公共」が新たな必修科目となり、授業で主権者教育などが取り入れられる。福田教諭は「最初は直感でもいい。投票した候補者を見続ければ、政治家を見分ける目も身に付く」と生徒に呼び掛けている。(前川茂之、井上 駿)

▼選挙費いくら?県議に聞く/「100万円未満」「400万円台」が最多

 自治体の首長や議員を選ぶ統一地方選が4月にある。経費削減や有権者の関心を高めるため1947年に始まり、19回目となる。

 かつては全国一斉に行っていたが、任期途中の辞職などがあり、統一率は27・21%(昨年12月時点)。それでも全国で973の選挙が予定され、都道府県議選は兵庫や大阪など41道府県である。

 今年は3年ごとの夏の参院選と統一選が重なる12年に1度の年にも当たり、「亥年(いどし)選挙」と呼ばれる。

 公選法は、資金力にかかわらず選挙運動の機会が持てるよう、はがきの交付など一部費用を行政が肩代わりする選挙公営制度を採用する。ただ、町村長や町村議選では街宣車のレンタル代やポスター代は自己負担で、選挙の規模により差がある。同法改正で3月以降、都道府県議・市議選でもビラの作成が公費負担で可能になる。

 兵庫県議(85人、欠員2)に前回選の費用を尋ねたところ、「100万円未満」と「400万~499万円」がともに8人で最多。政治活動費も含めて「800万円以上」とした議員も2人いた。資金源(複数回答可)は「自己資金」が最多の38人で、「個人への献金やカンパ、陣中見舞い」が28人だった。

 アンケートは昨年8月に行い、公費負担を除き、選挙運動期間以外に要した費用も含めた総額を尋ねた。最大会派の自民(44人)は個別回答を避け、他の6人は回答不可だった。(井関 徹)

2019/2/8

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