草の根主義 2013民意どこへ
特定秘密保護法案の参院採決が迫った6日昼。神戸・三宮を約300人が強行採決に抗議してデモ行進した。
神戸市西区の角屋(かどや)克子さん(55)は、11月に地元の有志で実施した法案の賛否を問うシール投票の結果を掲げて歩いた。「反対」に次ぎ、「分からない」の欄にシールが多い。
「国のかたちを変えようとする法律が分からないまま通ってしまう。それを忘れないことが私たちの責任」
神戸市長田区のイラストレーター涌嶋(わくしま)克己さん(63)の姿もあった。「表現の自由を守るため、自分が声を上げて動かなければ」
約11時間後、怒号の渦巻く参院本会議場で、法案は与党の賛成多数で可決された。
□ □
「護憲派候補を1人当選させるより、将来の国民投票に備えて中高生に憲法の大切さを伝える活動に必死になった方がいい」
11月24日、神戸市内で開かれた護憲集会。長野県松本市で市民運動に携わる私立高校教頭、竹内忍さん(55)の報告に会場が沸いた。
4月から3回目となる集会の呼びかけ人、神戸市須磨区の元教員佐藤三郎さん(81)はこの1年、政党の垣根を越えた護憲勢力の結集を訴えてきた。
だが、思い描いた護憲政党の選挙協力は実現せず、参院選でも憲法改正に意欲を示す安倍自民党が圧勝。巨大与党の足場は一層固まった。「次は憲法が危ない」と焦りが募る。
「ことが起きてからの反対では遅い。日々地域に根を張り、市民が力を付けないと」。活路を求めたのが、竹内さんら兵庫県外の市民運動との連携だ。
「世代や手法の違いを超えて、多くの人とつながりたい。本当の戦いはこれから」と自らを奮い立たせる。
□ □
「戦争は秘密から始まる。それは歴史が証明しています」。2日朝、JR神戸駅前でスーツ姿の男女が交代でマイクを握り「秘密保護法案反対」のビラを配った。1カ月前と比べ反応はいい。
弁護士登録15年以内の全国の有志でつくる「明日の自由を守る若手弁護士の会」。法の専門家として自民党の改憲草案の危うさを広く伝えようと、1月に結成された。兵庫支部は10月に発足し、約20人が月1回の早朝ビラ配りと寸劇、講演活動などに取り組んでいる。
秘密保護法は止められなかった。だが、同支部事務局長の吉江仁子(きみこ)弁護士(42)は少し先を見据える。「いまは憲法の理念を浸透させる歴史の途上。私たちの世代が足元でできることを続けていれば、いつかは…」
年明けも、仲間たちと神戸駅前に立つ。(勝沼直子、岸本達也)
2013/12/10