20万人超犠牲、沖縄戦の実像に迫る 「島守の塔」地方紙が映画化

2019/09/25 16:00

島田叡・元沖縄県知事

 太平洋戦争終結から75年となる2020年、沖縄戦を描いた映画「島守(しまもり)の塔」を製作すると、神戸新聞社をはじめ3県の地方紙などによる製作委員会が24日、発表した。住民と苦難を共にした神戸市須磨区出身の島田叡(あきら)・元沖縄県知事(1901~45年)と、栃木県宇都宮市出身の荒井退造・元警察部長(1900~45年)らを軸に、20万人以上の犠牲者を出した地上戦の悲惨さを通じ、人命の尊さ、平和の大切さを訴える。(津谷治英) 関連ニュース 戦後80年 銀幕から見つめ直す 日本の新旧戦争映画、神戸や大阪で続々上映 【識者コラム】戦後体制の原点を思う 日本は秩序回復リードを 中満泉 25年上半期の倒産は339件 前年比12.3%増、過去20年で5番目の多さ 兵庫県内

 島田氏の出身地の神戸新聞社とサンテレビ、荒井氏の出身地の下野新聞社、沖縄の琉球新報社と沖縄タイムス社などの協力で実現した。
 製作委員長には沖縄県元副知事の嘉数昇明(かかずのりあき)さんが就任。監督は「二宮金次郎」(2018年)の五十嵐匠さん、脚本は「武士の家計簿」(10年)の柏田道夫さんが務める。
 島田氏は旧制神戸二中(現兵庫高校)、東京帝国大を卒業して旧内務省に入り、45年1月に最後の官選知事として沖縄に赴任した。軍の協力要請を受ける中で、住民を追い詰める方針に苦悩。県民の生命を最優先に行政の指揮を執った。
 荒井氏は旧制宇都宮中学校(現宇都宮高校)、明治大などを卒業。警察要職を歴任して43年に沖縄に赴任し、県民の疎開を進めた。44年、沖縄を出発した学童疎開船「対馬丸」が米軍の攻撃を受け沈没し1484人が犠牲になるなど、苦闘しながら、県民保護の陣頭に立った。
 両氏は最後まで県職員と行動し、糸満市摩文仁(まぶに)付近で消息を絶った。沖縄では島守とたたえられる。映画の題名「島守の塔」は両氏や県職員の慰霊塔で、51年に同市摩文仁に建立された。
 両氏の縁で戦後、兵庫、栃木と沖縄県は交流を深め、長年築いてきた絆が映画製作につながった。作品は両氏を主役に、県民の目線で住民が巻き込まれた地上戦の実像に迫る。来年秋の完成を目指す。
 嘉数委員長は「沖縄戦を伝えるために地方紙が組んだことは大きい。島田さん、荒井さん、県職員の姿から、公職にある人たちのあるべき姿を問えるような作品にしたい」と話した。
 製作委員会事務局TEL028・678・9444(下野新聞社内)

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