(1)おひとりさま
2019/01/13 15:37
100歳までの人生プランを作った山下智子さん。「不安もあるけど、最期まで前向きに生きたい」=加古川市平岡町新在家
■笑顔で最期迎えたい
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よく隠し通せたなあ
女61歳、おひとりさま。これからの人生を充実させ、最期は笑顔でありがとうと言って終わりたい。「終活は、前向きに生きるためにするものよ」
加古川市の行政書士山下智子さんが手にするのは、100歳までのライフプラン表。「長生きしても金銭的に赤字にならず、プラスマイナスゼロで終わらせるのが目標」
プランは戦略的だ。73歳で行政書士を廃業するが、71歳から成年後見人の仕事を始め、80歳まで働く。趣味はインドアとアウトドアを。健康を保ちながら、体が不自由になっても続けられるように。80歳になると、体を動かす趣味はすぱっと辞める。けがをして寝たきりにならないためだ。趣味の編み物をボランティアで教えることで、老人ホームにコネを作る作戦もある。93歳で施設入所し、2057年に100歳を迎える。
60歳を境に、今後の人生を具体的に考えるようになった。きっかけの一つが、仕事で携わった90代の単身女性だ。本とラジオが好きで、施設で自立した生活を送っている。「私も周りに迷惑を掛けない『かわいいおばあちゃん』として人生を終えたい」
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「終活」という言葉が社会に定着して久しい。リサーチ会社マクロミル(東京)が16年に60~70代の千人に実施した調査によると、既に終活を行っていると回答したのは8・9%。近いうちに、または時が来れば始めたい人は6割超に上る。理由は「家族に迷惑を掛けたくない」が70・7%と最も多かった。
続いて18年に20~70代2千人に調査すると、70代女性の3割が既に行っていると回答。家族に迷惑を掛けたくないこと(全年代)は介護、終末期医療、所持品整理の順だった。
山下さんは、今できる身じまいを着実に進める。一昨年、同じマンション内で部屋を住み替えた際、家財の多くを処分した。次は70歳で3分の1、80歳でさらに3分の1にする予定だ。「ついのすみかは施設のワンルーム。そこに収まるようにしないと」。葬儀は互助会で積み立て、寺から法名も既に受けた。
「終活を進めることは、第二の人生を考えること。身軽になりながら、最期まで自分らしくいたい」
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「輝いて生きる3~おひとりさまでも大丈夫!」
12月1日、加古川市内でこんなタイトルの演劇が上演された。妻に先立たれた男性ががんを患い、友人や医師らに支えられながら、最期まで自分らしく生きる様子を描いた。
東播地域の医療福祉関係者らでつくるグループ「安心できる地域ケアを考える会」が看取(みと)りをテーマに毎年上演。今回は「おひとりさまの終活」に多くのシーンを割いた。「住み慣れた家のままで、本当に1人で死ねるの? という疑問に答えたかった」と、考える会事務局の藤田友紀さん(48)。「『終活』を、皆さんと一緒に考えたかった」
劇は約400人の観客に問い掛けた。今のあなたは安心して逝(い)けますか?(広岡磨璃)
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2065年、日本人女性の平均寿命は91・35歳、男性が84・95歳になるという予測がある。「人生100年時代」と言われるゆえんだ。同時に「終章」の生き方が注目されるようになった。どうすれば人間らしく、充実した人生をまっとうできるのか。東播地域の市民の模索を追った。