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神戸製鋼改ざん問題

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製品データ改ざんの舞台となった真岡製造所=栃木県真岡市(神戸製鋼所提供)
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製品データ改ざんの舞台となった真岡製造所=栃木県真岡市(神戸製鋼所提供)

 稼働から約50年となる神戸製鋼所の主力拠点、真岡(もおか)製造所(栃木県真岡市)。出荷前のアルミニウム材を、検査員が引っ張り試験機に挟み込む。

 自動車のボンネットなどに使うパネル材や飲料缶に使う板材。サンプルが上下に引っ張られ、割れた瞬間の力を測定してモニターに表示する。数値はそのまま自動で顧客向けの検査証明書に印字される。

 データ伝送の自動化が先月、完了した。「もう人の手が介入する余地はありません」と担当者。改ざんはできない仕組みだ。

 神鋼は昨年10月、アルミ・銅製品で検査データの改ざんがあったと公表。それまでは手入力で数値を書き換えることができた。仕様を満たさないまま虚偽の合格データで出荷する手口が、1970年代には始まっていた。

 同製造所も不正の舞台となり、日本工業規格(JIS)の認証が停止された。不正は国内外の計23工場で見つかり、神鋼は2019年度を目標に自動化などの対策を進める。

   ◇

 自動化は改ざんを防ぐ手だてになる。しかし「(改ざんの原因に挙がった)能力を超えた受注や生産を優先する姿勢は変わっていない」。神鋼の製造現場で働く兵庫県内の男性は、こう打ち明ける。

 鉄とアルミを手掛ける神鋼。自動車軽量化の流れに加え、東京五輪関連の再開発や世界景気の持ち直しで仕事が次々と舞い込み、製造現場はフル稼働が続く。

 その中で、不適合品を出さないよう心掛けても「仕様に合わない製品は出る」と男性は話す。不適合品は再加工や廃棄に時間とコストがかかる上、生産計画も遅れ、忙しさが増す。

 近年は働き方改革で残業抑制も強く求められるようになった。納期順守のために綱渡りの作業が続く。

 生産現場の負荷軽減の手だても必要ではないか-。神鋼は現場の困りごとを把握し、対策に生かすというが、男性はまだ改善を実感できない。

   ◇

 「信頼を大きく傷つけた。深くおわび申し上げる」

 先月26日、日産自動車の西川(さいかわ)広人社長が、国土交通省に燃費不正に関する最終報告書を提出した。同日、スズキも測定値の改ざんを新たに発表した。

 昨年以降、東レや三菱マテリアルの子会社などで品質不正が次々と発覚した。各社の報告書には、原因に「人員不足」「納期の圧力」など似たような文言が並ぶ。現場にしわ寄せが来る構図に大きな違いはない。

 神鋼の再発防止策は約20項目。品質管理に加え、製造現場に過剰な負荷がかからないよう、営業段階から生産能力に応じた受注をする体制への見直しも図る。企業風土や組織体制を抜本的に変える試みは、緒に就いたばかりだ。

 同社幹部は「対策に優劣はない」とし、数々の不祥事を振り返って「客からは、今度こそ変われよと厳しい目を向けられている」と危機感をあらわにする。

 「もう次はない。対策を着実に実行するしかない」

◆   ◆

 神戸製鋼所の製品データ改ざん事件は8日で発覚から1年になる。再発防止に向け、神鋼は経営体制を刷新し、再出発を図る。失われた信頼を取り戻すための取り組みの現状と、その道筋を探った。(横田良平)

【神戸製鋼所の製品データ改ざん事件】神戸製鋼所が国内外の23工場で、顧客と約束した強度などを満たさないアルミニウム・銅製品などについて、性能を満たしているように品質検査データを改ざん。1970年代には始まり、納入先は自動車や航空機など国内外の延べ688社に上った。東京地検特捜部が不正競争防止法違反(虚偽表示)の罪で法人の神鋼を起訴。米司法省が調査を続けるほか、米国とカナダで損害賠償などを求める3件の民事訴訟が起きている。

2018/10/5

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