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神戸製鋼改ざん問題

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石炭火力発電所の増設に向け、工事が始まった神戸製鋼所神戸製鉄所=六甲山から神戸市灘区を望む
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石炭火力発電所の増設に向け、工事が始まった神戸製鋼所神戸製鉄所=六甲山から神戸市灘区を望む

 大きな加工機械が、金属片を正確に削っていく。狂いはないか-。作業員が淡々と見つめる。

 神戸製鋼所から部品加工を請け負う兵庫県南部の工場。自動車業界の堅調な需要を受け、繁忙が続く。

 昨秋にデータ改ざんが発覚して以降、「下請けにも品質の厳格化を求めている。単価は変わらないのに手間は増えた」と男性社長。神鋼から検査証明書の提出を求められる納入品が増えたという。

 神鋼との取引は長く、売上高の2~3割を占める。今納めているのは、改ざん発覚前の受注品。これから受注にどんな影響が出るかは見通せず、不安が募る。

 ただ「すべての仕事が消費者につながる、との意識は出てきたのでは」と、神鋼の変化を感じ取る。

 「今後も大切なお客。信頼回復の手助けになるなら」と一手間を惜しまない。

 先月14日。神鋼が神戸市内で増設を計画する石炭火力発電所に絡み、建設中止を求める周辺住民らが同社などを相手取り提訴した。

 「何も信用できない」。原告の広岡豊さん(70)は神鋼の説明を疑問視する。

 住民説明会で再三、神鋼に増設後のばい煙の総排出量を示すよう求めたが、応じなかった。しかしその後、神戸市の審査会で、高炉稼働時よりも総じて排出量が増える試算が出された。

 「都合が悪い数値だから隠したのだろう。改ざんの時と似ている」と憤る。

 反発の声が上がる中、神鋼は今月、工事に着手。発電所が全面稼働すれば、電力事業は年間400億円の利益が見込まれる。業績安定には不可欠な事業だ。

 一方で、石炭火力は二酸化炭素の排出量が多く、環境面の懸念が大きい。神鋼は「国内最高レベルのばい煙処理施設導入や環境対策を行う」とするが、原告らはそれでも訴訟に踏み切った。根底には神鋼への強い不信感がある。

 「反対意見もきちんと受け止め、地域が誇れる企業になってほしい」。原告の女性は訴える。

 県内に約1千社の取引先があるとされる神鋼。頼みとする企業は多く、地域経済への影響力は大きい。

 「できれば石炭火力はしてほしくない。でも、それで神鋼や地域が元気になるのなら仕方ないのか」。地元向けの説明会に出席した住民女性は複雑そうだ。

 地元の男性株主(77)は「反対する人も納得できる説明を尽くすべきだ。データ改ざんから出直そうとする時期に、住民らの理解を得られないようでは印象が悪い」と苦言を呈する。

 神鋼の信頼回復は、顧客とともに地域の要請でもある。ある神鋼幹部は「ばい煙問題にしても、まだ地域の目は厳しい。顧客や世間に『神戸製鋼は変わった』と思ってもらえるまで絶対に気は抜けない」と語る。

 神鋼は企業倫理綱領で「地域社会に貢献する良き『企業市民』たることを目指す」とうたう。地域に生きる企業として、住民とつながり丁寧に対話する。この理念を果たすことが信頼の第一歩となる。(横田良平)

【神戸製鋼所の石炭火力発電所増設計画】神戸製鉄所で新たに発電所2基を増設する計画。出力は計130万キロワットで、昨年10月に停止した高炉の跡地に、2021年度と22年度の稼働を目指す。関西電力と30年間の売電契約を結んでいる。既設の2基と合わせて、神戸での発電の総出力は計270万キロワットとなる。神鋼は栃木県真岡市でも19年度から発電事業を始める。現行の経営計画には、事業成長戦略の一つとして「電力供給事業の安定収益化」を掲げている。

2018/10/9

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