最終第10巻完成 記録しつづける会 高森代表の“遺作”
2005/01/05 15:37
これまで発行した手記集を前に語っていた故高森一徳代表=2003年12月、神戸市内
阪神・淡路大震災の被災者らの手記を毎年出版してきた「阪神大震災を記録しつづける会」の代表、高森一徳さん=当時(57)、神戸市西区=が急逝して一カ月。高森さんが心待ちにしていた最終巻「阪神大震災から10年 未来の被災者へのメッセージ」が完成した。活動を支えたボランティアや投稿者らが集い、十日、出版記念と合わせたしのぶ会が県民会館(同市中央区)で開かれる。(磯辺康子)
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高森さんは震災時、神戸市中央区で翻訳・出版の会社を経営。「自分ができるボランティアを」と、約一カ月後に手記の募集を始めた。
妻の香都子さん(55)やボランティアらが、避難所や電柱にポスターを張って歩いた。高森さんが「発言弱者」と感じていた外国人にも応募してもらえるよう、文面は四カ国語。第一巻では二百四十編の手記が集まり、七十三編を掲載した。
第十巻までに掲載した手記は四百三十四編にのぼる。投稿数は徐々に減り、第八巻では十四編にまで落ち込んだが、高森さんは「その数字が表現するものもある」と話していた。
当初から「十年、十巻」の活動と決めていた。昨年十月、出版社にすべての原稿を渡した際には、「ほっとした表情だった」と香都子さん。しかし十二月六日、突然自宅で倒れ、帰らぬ人となった。「どんな表紙になるか楽しみ」と話していた本が自宅に届いたのは、その二週間後だった。
最終巻の表紙には、過去に出版した九冊の表紙が並ぶ。手記が掲載された三十八人のうちの一人、神戸市中央区の綱哲男さん(77)は第二巻から毎回投稿。今年、自身の手記も出版する予定で、高森さんに依頼した序文がすでに手元に届いていた。「完成したら最初に渡すつもりだった。第十巻が出た後も、年に一度は会いたいと思っていたのに」とうつむく。
高森さんの死後、会の活動にこれまでほとんどかかわっていなかった長女の恵さん(28)が、友人らに積極的に本を紹介するようになった。「亡き父に代わり心からお礼申し上げます」。購入者一人ひとりにお礼の手紙を添えている。
出版記念会は午後二時-三時半。「未来の被災者へのメッセージ」は神戸新聞総合出版センター刊。