「お元気ですか」県外被災者に電話訪問 8年で5千回
2008/01/16 13:55
県外被災者に電話をかけ、相談に乗る岡部育子さん=兵庫県庁
「お元気ですか」-。阪神・淡路大震災で兵庫県外に移住した被災者に、今も電話をかけ続ける人がいる。兵庫県の電話訪問相談員を務める非常勤嘱託職員の岡部育子さん(67)=神戸市中央区。この8年半で「電話訪問」は5741回を数えた。「やっと戻りました」。感謝を伝えに来た被災者と、手を取り合って泣き合ったこともある。現在も兵庫県に登録する県外被災者は153人。岡部さんは電話訪問で「帰りたくても帰れない」被災者を励ましている。
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震災による県外移住者数は正確にはつかめていないが、兵庫県は一九九五年の転出者数十七万五千四百二十四人から、九〇-九四年の平均転出者数十二万七百四十六人を引いた約五万四千七百人(約一万九千世帯)と推計している。
震災で岡部さんの自宅は一部損壊の被害を受けたが「自宅を失った被災者の役に立ちたい」との思いで、仮設住宅の巡回相談員を始めた。県が「兵庫に戻りたい」と希望する登録者への電話訪問事業を始めた九八年、岡部さんは仮設での活動が評価され、電話訪問相談員になった。
ピーク時には千五百七十六人いた登録者にかけた電話は、八年半で一万五千八百十七回。通話できたのは五千七百四十一回に上る。最初は行政の支援や県営住宅が当選しないことなどへの不満をぶつける被災者も多かったが、次第に打ち解けて話してくれるようになったという。
「久しぶりに人と話ができた」という独り暮らしの高齢者。希望する住宅が見つからず、移住先にも溶け込めない。県外被災者の疎外感に何時間も付き合い、もらい泣きすることもあった。
何よりもうれしいのが兵庫に戻ったという報告だ。「やっと公営住宅に当選しました」「お世話になりました」。電話だけでなく、県庁に訪問してくれる人もいる。
「被災者の病気や高齢化が深刻になってきているのが心配」という岡部さんは「今でも帰りたい人は多い。少しでも励みになれば」と話す。(畑野士朗)