企業の垣根越え商品化続々 神戸・ものづくり復興工場

2009/01/15 13:26

共同開発で生まれた独自商品を囲む社長ら=神戸市兵庫区和田山通1、ものづくり復興工場

 阪神・淡路大震災の被災企業向けに神戸市が建設した公営賃貸工場「ものづくり復興工場」(神戸市兵庫区)で、入居する中小企業とベンチャー企業の共同開発商品が相次ぎ誕生している。高齢者や車いす利用者が段差で使う小型リフト、画像処理技術を利用した防犯システムなどで、被災体験した企業などが工場内の“ヨコの連携”を強めている。(阿部江利) 関連ニュース 九州豪雨 被災地支援へ準備本格化 兵庫県内 子育て世代の防災冊子作製 神戸市とP&Gが協力 9カ国の行政職員 神戸・新長田のまちづくり視察


 同工場は一九九八年に入居が始まり、二〇〇四年からは被災していない企業も利用。現在、九十二社が入り、入居率は75・5%。
 東大阪市の中小企業が人工衛星の打ち上げに挑んだことに刺激され、入居する約十社が〇七年末、異業種交流研究会「運河プロジェクト『UP(アップ)』」を設立。新産業創造研究機構(NIRO)などの支援を受けながら、互いの技術を生かした共同開発を進めてきた。
 初の独自商品化を目指すのは、ベンチャー企業のサイエンティフィックテクノロジーズと金属加工の桑田製作所が開発した段差解消用小型リフト。サ社が〇五年に取得した特許技術を利用し、高齢者らの体重を感知し、空荷なら速く、荷物や人が乗ればゆっくり動く。小型で省エネという。
 三月ごろの商品化を目指しており、サ社の村尾良男社長(62)は「消費者の声などを取り入れて商品の完成度を高めたい」と話す。桑田製作所の桑田結会長(73)は「今まで培ってきた技術や経験を生かしたい」という。
 一方、ICタグの新和工業、画像処理のディーエスオー、部品製造の高田工業所の三社は昨年秋から、防犯向け画像記録装置を開発している。マンションなどで住民らにICタグを持たせ、タグを持たない不審者らが近づくと画像を記録する仕組みだ。高田工業所の高田龍造社長(65)は「異業種との共同開発は初めて。視野が広がり、勉強になる」と話す。
 このほかにも、三件の共同開発が商品化のめどが立っている。同工場の大橋秀行所長(64)は「入居企業の横のつながりや地道な活動が日の目を浴び始めた」と喜んでいる。

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