被災者癒やす「笑い」とは 西宮の高校生が進学で研究決意

2013/01/10 15:53

震災当時、避難のため防護ずきんをかぶせられた摩耶さん

 阪神・淡路大震災のとき9カ月だった西宮市の女子高校生が、被災者を癒やす「笑いの力」を研究するため、今春大学に進学する。きっかけは一昨年の東日本大震災。東北の被災地の映像を見ながら、両親に阪神・淡路当時の話をじっくり聞き、初めて被災するということを実感した。そして見えてきた将来の道。「被災者の笑顔を引き出したい」と決意を固めた。(金山成美) 関連ニュース くまモンが福島・小峰城へ 「復興一緒に頑張るモン」 復興応援キャラにのんさん 国事業へ参加呼び掛け 震災避難10万人下回る 避難指示解除が影響、復興庁


 兵庫県立西宮今津高校の中井摩耶さん(18)。18年前、阪神高速道路が倒壊した現場近くの集合住宅に、父雅之さん(52)、母裕子さん(50)と住んでいた。「揺れた瞬間、とっさに娘を抱きかかえた」と裕子さんは振り返る。
 東日本大震災の日、たまたま自宅で母親の仲間らが自宅に集まり、一緒に食事をしていた。テレビに次々と映し出される被災地の様子。阪神・淡路を知る母親たちは経験を語り始めた。
 震災について、それまで両親から話を聞いたり、学校で学ぶ機会があったりしたが、「ぴんとこなかった」と摩耶さん。「生々しい映像と母らの話で、本当にこの街で震災があったんだとリアルに感じた」。父の雅之さんが撮った震災直後の街や自宅の写真と映像を家族であらためて見て、語り合った。
 昨年、関西大学のオープンキャンパスに参加したとき、笑いで病気の子どもを癒やす活動を知った。そして震災に思いが至った。「苦しむ人のために、私にできることは何だろう」。次第に、進路が見えてきた。
 中学、高校で打ち込んだバスケットボール部顧問の教諭の影響もある。「包み込んでくれるような笑みに勇気づけられ、部員5人で兵庫県大会に出られて自信になった」
 進学先に関西大社会学部を選んだ摩耶さん。「笑わせることが得意ではないけど、人がどうすれば癒やされるかを学びたい」と意気込む。母の裕子さんは「18年前の震災当時は、生まれたばかりの娘を守ることで必死だった。摩耶が人を勇気づけたいと考えるようになってくれてうれしい」とエールを送っている。

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