震災で両親と兄亡くした湯口さん 決意の成人式
2013/01/14 19:17
成人式で、同級生と笑顔を見せる湯口礼さん(前列左から2人目)=14日午後、神戸市兵庫区御崎町1(撮影・大山伸一郎)
阪神・淡路大震災で両親と兄を亡くした神戸市灘区篠原南町、湯口礼さん(20)が14日、神戸市の成人式に出席した。当時2歳の礼さんは、がれきの中で父に抱かれ、約8時間後に救出された。18年間、祖父母の愛情を受けて生きてきた。晴れの日を迎え、「周りの人に受けてきた恩を、少しずつ返していきたい」と決意を新たにした。(上田勇紀)
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震災で、家族4人が住んでいた芦屋市津知町のアパートは全壊。父節生さん、母典子さん=いずれも当時(26)、兄怜君=当時(6つ)=が亡くなった。神戸市灘区の祖父克己さん(79)と祖母幸子さん(80)が、礼さんを引き取り、育ててきた。
礼さんに地震の記憶はない。物心がついてから祖父母に聞き、父が守ってくれたことを知った。小学生のころは暗闇を怖がったり、授業参観日に「さみしい」と思ったりした。でも、いつしかそんな気持ちも消えた。「祖父母がきっちりと育ててくれたから」
反抗期もあった。中学生になると、ささいなことで祖父母とけんかをした。夜に出歩き、家に帰らずに友達と遊んだこともあった。高校は中退した。「心配をかけたなあ」と振り返る。
建設現場の作業員として働き始めて約4年がたつ。朝は5時半に起き、神戸や京都の現場で夜まで働く。昨年12月からは通信制高校で学び始めた。学力を高め、資格を取るのに生かしたいと、仕事の合間を縫って勉強を続ける。
成人の日の朝。克己さんに「まだまだこれからや」と声を掛けられた。「ありがとう」と返した礼さん。神戸市兵庫区のホームズスタジアム神戸で開かれた式には、小学校や中学校の同級生と一緒に出席。再会した友人と記念撮影した。
「父みたいに大切な人を守ることができる大人になりたい」と礼さん。17日午前5時46分には、神戸・三宮の東遊園地に行く。亡き両親と兄に、「二十歳になったよ。元気にやっているからね」と報告するつもりだ。