南海トラフ地震に備え 県内企業が対策強化

2013/01/18 06:53

ヘルメット姿で避難訓練に臨む神戸製鋼所グループの従業員ら=神戸市中央区脇浜町2

 「南海トラフ」などで想定される巨大地震に対し、阪神・淡路大震災を経験した兵庫県内の企業は災害対策を強化している。事業継続計画(BCP)や避難方法の見直しを進めているほか、被災経験を先輩社員が後輩に伝える講演会を開くなど実践的な内容が目立つ。(まとめ・佐伯竜一) 関連ニュース 津波の高さの懸垂幕 南海トラフ地震想定 神戸 避難方法イラストで 児童向け防災地図制作 洲本 南三陸町の支援、今年も 加古川の「エコ炭銀行」


 神戸港内に造船所などを持つ川崎重工業(神戸市中央区)。内閣府が昨夏に南海トラフ巨大地震の被害想定を発表したのを受けて、事業所ごとに策定しているBCPの見直しを指示した。
 昨年末までに神戸、東京の両本社と国内全工場が、従業員の安全確保や生産維持・再稼働計画など具体策をまとめた。昨年11月に移転した東京本社では、非常時の発電用ガスタービンを1基増やし、2基体制に強化した。
 加古川市や神戸市東部の沿岸部に製鉄所がある神戸製鋼所(同)は昨年末までに、帰宅支援マップの配布▽各拠点に衛星電話配備▽コンピューターのバックアップ機能整備-などの対策を完了。「さらに大きい津波にも対応できる避難路の設定に取り組みたい」とする。シスメックス(同)も、本社を含む国内12拠点に無線機の配備を済ませた。
 播磨灘の河口域に工場を置く多木化学(加古川市)は昨秋に避難計画を見直した。地震発生から津波が到達するまでの時間によって避難先を分けた。到達時間が早い場合は学校など近隣の高層建物へ、時間がある場合は少し離れた高台へと設定した。
 阪神・淡路に次いで東日本大震災でも工場が被災した住友ゴム工業(神戸市中央区)。東日本の際はBCPを整備していたこともあり、短期間で操業再開にこぎつけた。2度の被災経験を後輩に語り継ぐ機会を設けてきたが、今年は17日に実施。「経験者の言葉で伝えることが大切」と担当者は話す。
 西宮市に工場がある電子基板向け薬品会社のメック(尼崎市)や、船舶用電気機器の古野電気(西宮市)も「従来の対策に加え、必要に応じて備えを強化する」とする。
 流通各社も災害対策を見直している。大丸神戸店(神戸市中央区)は昨年8月、津波時の避難先を「上層階」から「山側」などにマニュアルを改訂した。
 イオン(千葉市)は、災害時に「地域の一時避難所」の役割を果たせるように、イオンモール神戸北(神戸市北区)など全国の大型28店に大型テントを配置するなど対策を進めている。

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