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震災遺児1995・2011 春菜、佳祐の物語

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刻む(撮影・峰大二郎)
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刻む(撮影・峰大二郎)

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【佳祐の物語 伯母に見守られ日々成長】

 窓にはベニヤ板。入り口は閉ざされ、立ち入ることができない。

 宮城県石巻市立湊小学校。東日本大震災で津波が2階近くまで押し寄せた。校舎は今も使用できず、校庭に「絆~共に未来に向かって~」と刻まれた石碑が静かに立つ。

 石碑には、「いつまでもやすらかに」の一文。児童の中で唯一、犠牲になった辺見佳奈=当時(10)=の名前がここにあった。

 湊小学校4年生だった佳奈は、佳祐(けいすけ)(9)の姉。帰宅途中、大きな揺れに襲われた。自宅に戻ると、父の運転する車に、母と祖母と一緒に乗り込み、佳祐が待つ湊小学校へ。この途中、津波にのまれ、4人とも帰らぬ人となった。

 佳祐を引き取った伯母の日野玲子(53)は、当時の様子や今の暮らしを淡々と語る。

 佳奈や学校生活に話が及ぶと、それまでテレビに夢中だった佳祐が突然、振り向いた。

 「もうすぐ越えちゃうよ。佳奈ちゃん、ずっと4年生のままだよ」

 震災が起きたとき、1年生だった佳祐は今春、佳奈と同じ4年生になる。

 「あ、ここ行ったあ」

 福島県いわき市にある温泉施設が、テレビコマーシャルで流れたときのことだ。佳祐が無邪気な声を上げた。最近になって、亡き家族との思い出を、玲子に明かすようになった。

 子どもらしい自然な反応が、玲子にはうれしい。

 一人で留守番もできるようになった。玲子が仕事で家を空けようとすると、佳祐は「どこへ行くの」と寂しがり、ついてくることがあった。最近は、1時間くらいなら何も言わない。

 新しい2人の日常が、佳祐になじんでいく。

 玲子は、佳祐が震災直後によく見ていた古いアニメのビデオテープを、別の部屋にそっとしまった。

 少しずつ、成長する佳祐。まだ、幼いままのしぐさを見せることもある。夕食を終え、おなかがいっぱいになると、指しゃぶりをして横たわる。ストーブで暖まった居間で、すーっと眠る。その夜の佳祐の表情はまるで、2、3歳の幼児だった。

 そんな佳祐を隣で見つめながら、玲子はつぶやいた。

 「こうやって一緒に暮らしていても、大きくなったとき、やっぱり『自分には親がいないんだ』と思うのかな」

 一瞬、表情がこわばった。

 「でも、一緒に生きていくんだから、お互いに気を使ってたらしんどいし。ほめるところはほめて、しかるところはしかっていこう。最近はそう思ってるのよ」

 玲子はそう語り、いつもの穏やかな笑顔に戻った。

=敬称略=

(上田勇紀)

2013/1/19

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