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震災遺児1995・2011 春菜、佳祐の物語

(10)「あなたを守るから」 抱きしめる家族がいる
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【佳祐 春菜の物語 「抱きしめる家族がいる」】

 長女の小梅を産んで2週間が過ぎた。2012年5月6日朝。長野春菜(26)は、姉綾香(30)からの電話で、祖父=当時(84)=の死を知った。

 阪神・淡路大震災で両親を亡くし、8歳の春菜を引き取って育ててくれた祖父。葬儀のため、神戸市北区の家に帰った。春菜は、祖父が寝ていたベッドの枕元に、生まれたばかりの小梅の写真を見つけた。

 「最期まで、そばに置いてくれてたんや」。幼い日からの思いがこみ上げた。

 それから、7カ月がたった。

 東京都北区のマンションからは、スカイツリーが遠くに見える。

 「はいはい、泣かないの」。慣れた手つきで小梅をあやす春菜は、すっかり母の顔になった。

 夫の勝太(しょうた)(25)は会社勤めで、平日は夜遅くまで帰らない。春菜はソファにもたれ、テレビを見ていた。隣には、母乳を飲んで眠りについた小梅がいる。

 突然、テレビから報知音が流れた。「緊急地震速報です」

 次の瞬間、ゆっさ、ゆっさ-。18階にある春菜の部屋が揺さぶられる。「きゃっ」。思わず悲鳴を漏らした。電球の傘がカタカタと音をたて、台所で鍋のふたが落ちた。ベランダの戸が勝手に開く。

 春菜はとっさに、小梅におおいかぶさった。

 12月7日午後5時18分。三陸沖を震源とするマグニチュード7・4の地震だった。

 震源に近い宮城県石巻市。湊小学校3年の辺見佳祐(けいすけ)(9)は、伯母の日野玲子(53)と自宅2階にいた。津波警報発令。防災無線が避難を呼び掛けた。

 「ねえ、ここにいていいの」。不安そうに佳祐が言った。「大事なものをかばんに詰めて」。玲子が叫んだ。

 2人は外へ。だが、自宅前の道路は既に混み合っている。佳祐の両親と祖母、姉が渋滞に巻き込まれ、津波にのまれた東日本大震災のときと同じだ。

 引き返した。2階の居間に戻り、玲子は佳祐を落ちつかせるように言った。

 「大丈夫。あの時もここまで津波は来なかったんだから」。佳祐の肩を抱く。

 東京と石巻。春菜と佳祐は、同じ揺れに襲われた。

 地震が収まると、春菜の携帯に勝太から電話があった。「大丈夫やで」。春菜が明るく無事を伝えた。

 石巻では、2時間後に津波警報が解除された。日常が戻る。「私が守っていかないといけない」。玲子は心に刻んだ。

 春菜は、腕の中の小梅を見つめていた。

 「守っていくよ」

 亡き両親を思い、小梅の小さな額に自分の額を当てた。

 「小梅のおじいちゃん、おばあちゃんの分まで、いっぱい愛してあげるからね」

 抱きしめると、小梅がにこっと笑った。

=敬称略、おわり=

(上田勇紀)

2013/1/21

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