震災経験世代卒業で「最終号」 舞子高環境防災科の冊子

2013/01/18 15:22

思いを冊子にまとめた環境防災科の9期生たち=神戸市垂水区学が丘3、舞子高校

 全国で唯一、防災を専門に学ぶ県立舞子高校(神戸市垂水区)環境防災科で、3年生の阪神・淡路大震災の体験をまとめる取り組みが本年度で終わる。自分たちが感じた震災を伝える「教科書」にしようと2004年度に始まったが、今春卒業の9期生を最後に震災を体験した生徒がいなくなることから、内容を見直すことになった。(宮本万里子) 関連ニュース ラストシーズン【上】兵庫商 古豪の誇り胸に 小さな生き物、触るとキュン 専門店やカフェ人気 知事選一夜明け 井戸氏ラジオ出演、5期目へ意気込み


 冊子は「語り継ぐ」と題し、震災時、小学2年生だった環境防災科1期生が最初にまとめた。4年ほど前から、自分たちの体験の記憶よりも、両親らから聞き取った内容が増えていた。
 9期生39人は、震災時生後間もないか、生まれていない生徒たち。北崎翔太さん(17)は震災発生の9日後に生まれた。母親が周囲の人に食事や毛布を提供してもらい、助けられながら自分が誕生した話に触れ、「祖母は、僕が被災して亡くなった人たちの生まれ変わりだと言った。そうなれたらいいなと思う」と記した。卒業後は大学に進み、心のケアを担う臨床心理士を目指す。
 三好拓也さん(18)は、神戸市消防局で働く父親が、震災時に水が出ずに消火できなかった悔しさを聞き取り、「命と向き合い続ける父を誇らしく思う」とつづった。「消防士という職業の偉大さと大変さを感じた」といい、「将来は消防士に」との気持ちを抱く。
 「語り継ぐ」はホームページで公開しており、兵庫県外の高校が授業に活用した例もある。環境防災科長の諏訪清二教諭(52)は「震災のつらさだけでなく、乗り越えるための助け合いや支援の喜びもつづられている。生徒の視点で語り継げたことに意義があったと思う」と振り返り、「来年以降、震災の教訓をどう継承していくか考えたい」と話している。

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