阪神・淡路語り継ぐ 語り部の聴講者80万人に

2013/12/28 20:09

 阪神・淡路大震災の教訓を伝える人と防災未来センター(神戸市中央区)で、語り部の講演を受けた聴講者数が80万人を突破した。開館から来春で12年。小中学生が修学旅行で立ち寄る場として定着し、全国から毎日のように団体客が訪れる。 関連ニュース 九州豪雨 被災地支援へ準備本格化 兵庫県内 子育て世代の防災冊子作製 神戸市とP&Gが協力 9カ国の行政職員 神戸・新長田のまちづくり視察

 12月初旬。岩手県の県立高校生がセンターを訪問し、震災当時に神戸市東灘消防署長だった西村幸造さん(79)の話に耳を傾けた。
 「消防隊員も市民を救えなかったという思いがある。反省ばかりだ。災害時には、自分たちが困っている人に手をさしのべる気持ちを持ってほしい」
 西村さんは、多数の火災認知や救助要請に対応しきれなかった後悔をありのままに語った。女子生徒の一人は「自分にできることは何かを考えさせられた」と振り返った。
 語り部は、元行政職員や主婦など45人おり、体験を伝えている。団体向け講演の聴講者数は、開館した2002年度は約4万5千人だったが、翌年には約7万1千人に。東日本大震災が起きた11年度は9万人を超えた。
 13年11月末までの合計は82万8584人。このうち7~8割が全国の小中学校の修学旅行や課外学習の児童・生徒で、春と秋のシーズンにはあまりの人気に対応しきれず、講演を断るケースもある。
 熊本市では今年、公立中学校42校のうち14校が修学旅行でセンターを訪れた。旅行先は京都が多いが、2泊3日のうち1日を使いセンターを見学し、講演を聴く。熊本市教育委員会は「震災の恐ろしさを肌で感じられ、防災意識向上に役立つ」と指摘。名古屋市でも関西へ向かう中学校の多くが立ち寄る。同市教委は「防災教育が重要視される中、実際に見聞きできるのが大きい」とみる。
 気がかりは語り部の高齢化。45人の年齢構成は50代1人、60代14人、70代23人、80代7人で、新たなボランティアは減少傾向だ。センターの前田晃・運営課長は「これからも生の声で震災を語り継ぎたい」と、来年1月17日から語り部を募集する。65歳未満対象。人と防災未来センター運営課TEL078・262・5501
(上田勇紀)

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