「記憶継承」わずか38% 全半壊率9割超の芦屋・津知町
2014/01/05 10:05
芦屋市津知町
阪神・淡路大震災で全半壊率93%と壊滅的な被害を受けた兵庫県芦屋市津知町で、震災の記憶が薄れている。同市によると、同町で震災を経験し、現在も同町に残る住民(一時転出を除く)は2割弱。神戸新聞社が同町住民を対象に行ったアンケートでは「震災の記憶が伝えられている」との回答は38%にとどまり、地域での継承が課題になっている。(松本大輔)
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神戸市との境に接する津知町は、震災で56人が死亡(当時人口1218人)。被害が最も激しかった地域の一つとされる。
芦屋市によると、2013年12月1日現在、同町の住民は537世帯1200人。そのうち震災前から継続して町内に住所を置くのは96世帯179人にとどまる。
神戸新聞社のアンケートは昨年10~11月に実施。一時転出者を含め、同町で震災を経験した世帯のうち93世帯に配布、うち42世帯から回答を得た。
震災後に町を離れた住民は多く、76%が「(仮設住宅暮らしなどを含め)一時的に転出した」と回答。転出期間が「4年以上」の人も1割を超えた。
「津知町の震災の記憶は伝えられていると思うか」との問いに対し、「伝えられていない」「どちらでもない」と回答した住民は55%に上った。
伝えられていない理由としては「新しい住民の増加」を挙げる人が最も多く、震災後に増加したマンション住民らとの意識の差を指摘した。「震災を語る機会がない」「被災者の高齢化」を回答した人も多かった。
同町では毎年1月17日、慰霊碑がある津知公園で追悼式を行っている。自治会主催の防災訓練も年1回実施し、炊き出しなどを通して当時の記憶の継承に努めている。
自治会副会長の谷口孟(はじめ)さん(78)は「震災を忘れることはないが、高齢化や新しい住民の増加で、追悼式のお参りは年々減ってきている。若い人たちに呼び掛け、次の世代に引き継いでいきたい」と話している。