桜の絵がつなぐ復興 岩手の子ら神戸で追悼

2014/01/17 06:40

大船渡小学校の卒業制作で描いた「命の一本桜」=2012年10月、岩手県大船渡市(中嶋洋子さん提供)

 阪神・淡路大震災で教え子を亡くした神戸市東灘区の画家中嶋洋子さん(61)が16日、絵を通じて支援している岩手県大船渡市の中学生ら3人と神戸・東遊園地で再会した。「震災から立ち直った神戸を見てほしい」との願いを込め、「1・17のつどい」実行委員会が招いた。初めて神戸を訪れた中学生は「何が復興の力になったかを学び、東北に持ち帰りたい」と話した。(上田勇紀) 関連ニュース 震災避難10万人下回る 避難指示解除が影響、復興庁 熊本地震の復興「手伝って」 4町村、都市から職員採用へ 民進2トップ被災地入り 復興重視アピール


 中嶋さんは19年前、主宰する絵画教室「アトリエ太陽の子」に通う小学1年と幼稚園児の姉妹を震災で亡くした。以来、講演や絵画教室などを通じ、命の大切さを伝えている。
 神戸を訪れた3人は、大船渡中学校1年の及川真子(まこ)さん(13)、同2年の森田礼子さん(14)、元大船渡小学校長の柏崎正明さん(61)。及川さんと森田さんは東日本大震災当時、同小の児童で、迫る津波から高台の中学校へ逃げて助かった。自宅は津波で流され、仮設住宅で暮らす。
 出会いは2011年4月。中嶋さんが大船渡小、中学校を訪れ、絵を届けた。アトリエ太陽の子の生徒や、兵庫県内の子どもらが描いた桜。一緒にこいのぼりも描いた。
 「この先どうなるのか不安だった。震災後初めて、楽しいという感情が生まれた」と森田さん。交流は深まり、中嶋さんは12年10月、及川さんら当時の6年生と一緒に大船渡小学校の卒業制作を完成させた。桜の花びらを子どもたちの手形で表現した高さ3・2メートル、幅8メートルの大作は「命の一本桜」と名付けた。
 3人は16日夕に東遊園地に到着。中嶋さんの案内で、追悼行事のために用意された竹灯籠を見て回った。「大船渡はまだがれきが残り、行方不明の人もいる。早くそれがなくなればいいな」と及川さん。「復興できるように、神戸をよく見て、友だちに伝えたい」
 17日は午前5時46分、東遊園地で黙とうする。その後、アトリエ太陽の子のテントで訪れた人々とともに手形で花びらを描き、新しい命の一本桜を作り上げる。森田さんは「どのように月日が流れ、復興したのか。いろんな人に話を聞きたい」と話した。

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