亡くした子どもに毎日話しかけ 神戸の女性

2014/01/17 16:40

銘板に手を伸ばす原田真智子さん。「19年間、心で一緒に生きてきた」=17日午前5時17分、東遊園地(撮影・後藤亮平)

 神戸・三宮の東遊園地。神戸市兵庫区の原田真智子さん(58)は今年も「慰霊と復興のモニュメント」を訪ねた。銘板に、高校3年だった長男昌彦さん=当時(18)=と同2年の長女真理子さん=同(17)=の名が刻まれる。 関連ニュース ラストシーズン【上】兵庫商 古豪の誇り胸に 小さな生き物、触るとキュン 専門店やカフェ人気 知事選一夜明け 井戸氏ラジオ出演、5期目へ意気込み


 あの日の前の夜、夫は出張でおらず、普段は2階で寝る子どもたちに声をかけた。「寂しいから、1階で一緒に寝よ」
 「お母さん、地震?」。隣で寝ていた真理子さんの最期の言葉。「布団かぶっとき」。真智子さんが叫んだ瞬間、自宅は崩れた。真智子さんと次男博行さん(29)は助け出されたが、2人の息はもうなかった。
 2人の名を聞くのもつらかった。家でも話を避けた。それでも、街で制服姿の高校生を見ると、泣きながら後を追う自分がいた。
 凍った心を溶かしたのは数年後、友達が2人の名を口にしたとき。うれしさが胸に広がった。優しく、声優になるのが夢だったまーくん。アルバイトを頑張っていたマリコは、トリマーになりたいって言ってたっけ。懸命に生きた姿が鮮明によみがえった。
 おはよう。おやすみ。毎日、話しかける。あの子たちが見守ってくれるから生きてこられた、と思う。
 銘板にそっと触れる。「お母さんは元気でやってるよ。いつも助けてくれてありがとね」
(黒川裕生)

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