「阪神・淡路」定点観測 20年で再び写真集出版へ
2014/01/31 15:52
震災でアーケードが落ちた三宮センター街で、カメラを構える町田さん=神戸市中央区三宮町1
阪神・淡路大震災から丸19年となった1月17日、神戸の街で、震災当時の写真を手にカメラを構える男性がいた。東京都八王子市の運転手、町田聖二さん(60)。1995年と2004年に被災地を定点撮影し、05年に写真集を出版した経験がある。震災20年となる来年には、神戸や淡路島の復興ぶりを伝える新たな写真集を出したいという。(那谷享平)
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町田さんは1995年1月20日、民放テレビ局取材班の運転手として被災地に入った。初めての神戸で目にしたのは、横倒しになった高速道路、がれきの山と化した家々…。現実感のない光景を前に、趣味で持ち歩いていたカメラに無意識に手が伸びた。2週間の滞在中、仕事の合間に360枚を撮影した。
以来、毎年1月17日になるとアルバムを開き、思いを巡らせた。「神戸や淡路島はどうなったんだろう」。自分の目で確かめたくて、2004年、一人で兵庫を訪れた。
9年ぶりの被災地は一変していた。アーケードが崩れ落ちた三宮センター街にはにぎわいが戻り、海に沈んだ波止場には新しい道路ができた。力強く再生した街に心を打たれ、「復興ぶりが分かる写真集を出そう」と決めた。震災10年の05年1月17日、「1995.1.17 阪神淡路大震災 十年目の残影」を出版した。
今年は1月17日から3日間、20カ所以上を訪れ、同じ角度からシャッターを切った。随所で建て替えが進み、10年前、神戸市長田区などで目についた道路のひび割れや更地は見当たらなかった。神戸ハーバーランドの新しい大型商業施設や、建物が整然と立ち並ぶ淡路市の光景からは、震災の傷痕を見つけるのが難しかった。
一方で、慰霊碑の前で涙する被災者の姿は今も変わっていなかった。「遺族らの心にはまだまだ傷が残っている。全てが復興できたわけではない」
来年の出版を目指す写真集では、当時と今回撮影した街の姿を対比させるつもりだ。「震災を知らない世代が当時と今の写真を見比べて、震災を考える機会になれば」との願いを込めて。