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砂上の橋脚 「基準」とは何か

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建設工事が進む新名神高速道路=兵庫県猪名川町広根(撮影・笠原次郎)
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建設工事が進む新名神高速道路=兵庫県猪名川町広根(撮影・笠原次郎)

建設工事が進む新名神高速道路=兵庫県猪名川町広根(撮影・笠原次郎)

建設工事が進む新名神高速道路=兵庫県猪名川町広根(撮影・笠原次郎)

 9月末、大阪。政府の「国土強靱(きょうじん)化」を取り仕切る内閣官房参与、藤井聡(46)が講演した。

 「ツルツルのタイヤで時速150キロを出しとるようなもんですわ」。京都大教授の藤井は、大災害に無防備な日本社会を関西弁で批判した。

 藤井は巨大地震による壊滅の危機を叫び、国土強靱化の必要性を説く。公共構造物の耐震化を中心とした地震対策の枠を超え、経済・社会が抱える弱点を総合的に解消するというが、政府支出によるデフレ脱却という大きな狙いもある。

 道路関連では、高規格幹線道路網の未整備区間解消に重点を置く。それは、地域経済の発展を期す地方政財界の宿願でもあった。「既存の道路の寸断に備える『救援の道』」という強靱化の大義は、リニア中央新幹線や新東名・新名神高速道路にまで広がる。

 一方で、道路橋の耐震化率は2016年までに79%から82%に改善する目標のみ。道路橋の耐震基準を引き上げようとする動きも見られない。

   ■

 2020年の五輪開催決定に沸く首都東京。中央環状線、外環道、圏央道の「3環状道路」の整備の動きが加速する。

 首都高速道路会社は、阪神・淡路大震災を踏まえた耐震化を昨年完了したという。首都直下地震について、担当者は「阪神・淡路級を超えるものではなく、橋脚倒壊などの被害はないだろう」との見解を示す。昨年12月に公表された国の想定も、首都高速の被害を「軽微」としている。

 しかし、国の想定は、今後30年間で70%の確率で起こるとされるマグニチュード(M)7級を前提とし、確率0~2%の関東大震災型(海溝型、M8級)は「参考」とされた。M8級なら、被害が「軽微」で済まないのは明らかだろう。

 「M8級のことはよく分からない」。首都高速の担当者は言葉を濁す。

   ■

 震災直後、阪神高速神戸線の「廃止」が議論された。だが、阪神高速道路公団(当時)は復旧を急ぎ、約1年8カ月後、当初予定よりも大幅に早く全線開通を実現した。都市高架道路の危険性を指摘する声は、次第にかき消されていった。

 確かに、震災後、道路橋の耐震基準は強化された。だが、巨大地震を前に「万全」には程遠い。東京工業大名誉教授の川島一彦(66)は「いくら備えていても、想定外は起こる。リスクが常に存在することを、私たちは知らなければならない」と説く。

 広島市の土砂災害(8月)や御嶽山(おんたけさん)の噴火(9月)は、科学の限界を見せつけた。川島は言う。

 「地震、津波、台風、洪水、土砂災害など自然災害の猛威にさらされる危険な国土にあって、人類史上経験がない大都市に住んでいることが、いかに大きなリスクを抱えているか。国民も覚悟し、備えるしかない」

 阪神・淡路大震災から20年。私たちが問われている。=敬称略=

(森本尚樹)

=おわり=

2014/10/26

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