転機 それから
人の輪 広げる場所を

正井礼子さん (64)
ウィメンズネット・こうべ代表/神戸市

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転機 それから
人の輪 広げる場所を

正井礼子さん (64)
ウィメンズネット・こうべ代表/神戸市

 女性が家庭や仕事のことを本音で話せる場「女たちの家」を開設したのは、震災の前年でした。配偶者らの暴力(DV)から逃れるシェルターとしても活用し始めた直後、あの地震に遭いました。未来への希望を込めた一軒家は宅地の擁壁ごと壊れてしまいました。
 でも落ち込んではいられませんでした。被災女性を支援するために始めたのが、電話相談です。DVや子どもへの虐待など悲痛な声を聞きました。「大変な時にDVなんかで相談する私はわがままですか」。そう言った女性もいました。非常時のストレスは、弱い者に向かっていました。
 その時、あらためて感じました。女性や子どもを守るには、日常の地道な活動しかないと。例えば、避難所や仮設住宅の運営に、もっと女性が関わるためには、日頃の男女共同参画が大切なんです。
 2005年にシェルターを再開し、昨年は女性と子どもの支援拠点「WACCA(わっか)」を立ち上げました。地域の人やボランティアの力も借りて、シングルマザーの子どもたちの学習支援などに取り組んでいます。
 再起した街の一角から、人の輪が広がっていくことを願っています。(三浦拓也)


2014年7月19日掲載
写真撮影場所:

神戸市長田区腕塚町5、「WACCA」