災害援護資金 8割「免除」、少額返済 52億円分想定 阪神・淡路大震災 神戸市
2015/06/03 15:38
阪神・淡路大震災の被災者に国や自治体が貸し付けた「災害援護資金」について、神戸市は13日、少額返済者による返済をいったん停止し、資力の調査に入る方針を明らかにした。市内の少額返済者は4455人(3月末時点)に上るが、現段階では、少なくとも8割の約3400人、約52億円が実質的に支払いを免除される見通しという。
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神戸市の久元喜造市長が同日の会見で方針を発表し、「あくまで予測だが、かなりの人が免除の対象になるのでは」と述べた。災害援護資金の巨額の未返済は長らく問題になっていたが、同市では、一定の解決が見いだせそうだ。
災害援護資金の返済免除は従来、借り主が死亡または重度障害で、連帯保証人も返済できない場合が対象だった。しかし内閣府は4月、返済できる見込みがない少額返済者について、各市の判断で免除対象にできる通知を兵庫県や同市に提示。同市は少額返済者について「現に返済できない状態の可能性が高い」と判断し、全員の資力を調べることを決めた。
口座振替の場合は6月1日引き落とし分から、1年間返済を保留。県の判定式に従い、少額返済者の所得や資産、負債、生活費を基に返済できるかどうか検討する。返済できる見込みがない場合は、保証人を調査し、返済できるとされれば支払いを猶予(最長1年で更新)。保証人も返済できない場合は免除となる。2015年度中の調査完了を目指す。
月に千円ずつ返すなどの少額返済者は高齢化に加え、年間所得は平均約90万円。本人の経済状況が好転することは考えにくく、保証人が支払える状態でも支払い猶予が続くため、実質的な免除となる可能性は高い。
(紺野大樹)
〈災害援護資金〉
災害弔慰金法に基づき、全半壊世帯などに上限350万円を貸す制度。原資は国が3分の2、都道府県か政令市が残りを負担し、市町村が貸し付ける。返済期限は10年。阪神・淡路大震災では未返済が多額に上り、政府は支払期限の延長を続けている