阪神・淡路大震災21年 記憶、教え子につなぐ

2016/01/18 12:00

竹灯籠に火をともす松田一彦さん(左)と母信子さん=17日朝、東遊園地(撮影・大森 武)

 「震災」を何も知らないから、初めてここで祈った。生徒に何かを伝えたい、と。 関連ニュース 九州豪雨 被災地支援へ準備本格化 兵庫県内 子育て世代の防災冊子作製 神戸市とP&Gが協力 9カ国の行政職員 神戸・新長田のまちづくり視察

 中学校教諭の松田一彦さん(27)=神戸市北区鹿の子台北町=は、母の信子さん(57)=同=と神戸市中央区の東遊園地を訪れた。
 同市灘区に住んでいた信子さんの姉、大城澄子さん=当時(42)=とその夫元達(げんたつ)さん=同(52)=が亡くなった。目の不自由だった祖母田畑キクさんは避難中に転倒し、入院生活の末に83歳で死亡。別の伯母は仮設住宅で独り亡くなった。
 当時、同市長田区上池田に暮らしていた一彦さん。激震で家を飛び出すと、南方のJR新長田駅あたりで炎が上がっていたのを覚えている。
 5年前、同市の中学校教諭になった。震災を生徒に教える立場。一昨年には、震災20年に向けて生徒らと劇を作った。でもあの日、あれから、何があったのか。語る言葉があまりに少ないことを思い知った。そして今年。「初めてやけど行こうと思うねん」。生徒たちに告白した。
 竹灯籠を見つめる。ろうそくの明かりが頼りなく揺れた。「消えた火をまたともして、つないでいく。記憶を伝えるってそういうことなんじゃないかな」。生徒に伝えようと思った。(高田康夫)

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