自主防災会で恩返し 大震災で地域住民に救出され

2017/01/07 15:13

地域の自主防災会の倉庫を整理する和泉喜久男さん=西宮市江上町(撮影・三津山朋彦)

 阪神・淡路大震災で長男=当時(10)=を亡くした兵庫県西宮市の和泉喜久男さん(66)が、地元の自治会長として自主防災会をつくり、昨秋に初めて防災訓練を実施した。地震では妻と父も生き埋めとなり、住民の手でがれきから救出された。「災害は止められないが、人間は助け合うことはできる」と共助の重要性を訴える。(斉藤絵美) 関連ニュース 「脱出ゲーム」で楽しく防災訓練 震災経験者考案 束芋さんの新作公開も 京都府新鋭選抜展 阪神・四藤球団社長らが黙とう 合同自主トレ中の新人選手も


 和泉さんは当時、同市江上町の自宅で小学4年だった長男の忠宏君、妻、2人の娘、父の6人で暮らしていた。大正時代に建てられた木造2階の自宅は激震で全壊。1階で妻と寝ていた忠宏君が亡くなった。
 妻と、1階の別の部屋で寝ていた父も生き埋めになったが、近所の人たち約20人がロープなどを使って柱やがれきを取り除き、空が明るくなったころには2人とも救出できた。
 その後も、忠宏君の遺体に寄り添い、倒壊を免れた自宅の一部で寝泊まりする和泉さんに、近所の人が食事や衣類などを差し入れしてくれた。和泉さんは「20年以上たつのに、あの時の人の温かさは忘れたことはない」と感謝する。
 あの日から18年後。尼崎市の専門学校長を務め多忙な中、地域住民から自治会長を打診され、2013年度に就任。高齢化が進む地域で、人間関係が希薄になりつつあることを痛感した。南海トラフ巨大地震への備えにも不安を感じた。
 一昨年3月、和泉さんの提案で自主防災会を結成。昨年9月に初めて防災訓練を実施すると、約50人が参加してくれた。「今も住民たちは22年前のような助け合う気持ちを持ってくれている。リーダーシップを取って引っ張っていきたい」と意気込む。2月にも防災講演会を計画する。
 震災から22年となる17日は例年通り、地震発生時刻に西宮震災記念碑公園に向かう。
 「元気にやってるか? こっちは元気にやってるよ」。忠宏君にそう報告するつもりだ。

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