震災モニュメント銘板 「森温泉」の立花さん追加

2018/01/07 11:05

立花武さんの遺影を抱く妻の由紀恵さん(中央)と、銘板に手を合わせる長男の隆さん(左)=神戸市中央区加納町6(代表撮影)

 神戸・三宮の東遊園地にある「慰霊と復興のモニュメント」には17日、復興のため奔走した故人らの名前も加わった。全壊した銭湯「森温泉」(神戸市東灘区)を避難所でいちはやく再開して被災者の心身を温め、2014年に81歳で亡くなった立花武さんの名前も。長男の隆さん(56)は「おやじが残した銭湯、1年でも長く続けるから」と誓った。 関連ニュース 神戸で4人死亡、42人感染 新型コロナ 40代男性、コロナで相次ぎ死亡 重篤な基礎疾患なし 神戸で新たに6人死亡、33人感染 新型コロナ

 森温泉は1961年に武さんの父が開業。95年1月の震災で2階の住居部分が崩落し、煙突は半分に折れた。武さんは妻の由紀恵さん(77)ら家族と近くの森公園に避難。テント村となった公園で暮らし、顔の広さから「村長」と呼ばれた。
 当初は「もう風呂は終わりや」とふさぎ込んでいた。だが避難者の「また風呂やってや」という声に応え、95年3月、がれきから掘り出したバスタブをブルーシートで囲って臨時の森温泉を開設。同年7月には元の場所にプレハブを建て、仮設営業を再開した。
 「おう、生きとったんか」「今どこにおんの?」。再開後、震災後に遠くへ移り住んだ人たちも集まり、そんな会話が途切れなかった。武さんはその様子を見守り、「被災者やボランティアと一緒に建て直した風呂や」と話したという。仮設営業は2005年に全面改修するまで続いた。
 会社員だった隆さんは06年に退職し、経営を引き継いだ。多くを語らない武さんだったが、遺書には「(銭湯は)非常につらく厳しいが公共性の高い仕事。来てくれるお客さんのために頑張ってほしい」という言葉が残されていた。
 この日、由紀恵さんが武さんの銘板を張り付けた。隆さんは、晩年まで番台に立ち続けた武さんの遺影を抱いて寄り添った。「おやじの生きた証しを残せてよかった」と手を合わせた。(金 慶順)

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