超高層ビルでのヘリ訓練 神戸で8年ぶり実施
2018/01/07 14:54
高層ビルの屋上で8年ぶりに実施されたヘリの離着陸訓練=神戸クリスタルタワー(カワサキライフコーポレーション提供
阪神・淡路大震災から22年の今年1月17日、神戸市内で、ある防災訓練が8年ぶりに実施された。同市消防局による「大災害を想定! 高層ビル屋上で消防ヘリコプターの離着陸訓練」。近年急増する高層建物で屋上ヘリポートを使い、要救助者の救出を想定した訓練だったが、周辺への騒音の配慮から長い間、見送られてきた。(鈴木雅之)
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訓練が行われたのは、JR神戸駅近くの神戸クリスタルタワー(同市中央区)。川崎重工業神戸本社や県民総合相談センターなどが入るオフィスビルで、管理するカワサキライフコーポレーションが「定期的な訓練が必要」と依頼した。約30分間で3回の離着陸を繰り返した。
ヘリ着陸の誘導灯の点灯手順を管理者と確認するなど成果があったといい、同市消防局は「高さ100メートルを超えると風の影響を受けやすくなる。実践的な経験をつめた点でも有益だった」とする。
同市消防局によると、市内で高さ100メートルを超える超高層建築物は、同タワーを含む計40棟。うち14棟が「屋上緊急離着陸場」を設ける。ヘリの離着陸が可能で、火災や自然災害時などに、住民救出や救援物資の輸送に利用される。
高層建築物の屋上での訓練は、2009年までほぼ毎年実施していたが、以降は途絶えた。理由の一つは「騒音」。過去の訓練で苦情の有無は不明だが、ヘリでの救急搬送の際に苦情が寄せられることもあるといい、訓練はいわば「自粛」状態だった。
「住宅だけでなくオフィスも多い都市部では、ヘリの音が企業活動に支障を来すことも想定され、実施が困難だった」と、同市消防局航空機動隊の担当者は説明する。
同様の理由で、東京消防庁や大阪市消防局も近年、実施していないという。大阪市の場合、関西空港や大阪(伊丹)空港を離着陸する飛行機が多いのも一因だが、同市の担当者は「民間の高層ビルで行うとなると騒音にも配慮が必要で、住民全員に許可を求める作業に膨大な時間がかかって、事実上、難しい」と話す。
今回の訓練では、約100メートル離れた場所で計測した騒音レベルは、「日常音」とされる50デシベルから、「うるさい」レベルの70デシベルほどだったが、同タワーの加藤幸次郎・消防担当部長は「周囲の事業者へ丁寧に周知し、理解をしてもらえたと思う」とする。
火災だけでなく、発生が懸念される南海トラフ巨大地震では、長周期地震動による高層建築物の被害も想定され、神戸市消防局は訓練の継続を模索している。